遅すぎた利上げで日銀が陥ったジレンマ…植田総裁の慎重な物言いがアダで円安加速、長期金利も上昇

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 好調な株価とは裏腹に、円・債券売りが止まらない。日銀は景気を冷やすまいと慎重に慎重を重ね、ようやく利上げに踏み切ったが、円安・物価高の抑止どころか売りが売りを呼ぶ状況を招いている。

 22日の日経平均株価は一時、前週末比1000円超上昇。終値は5万402円39銭で、15日以来5営業日ぶりに節目の5万円を超えた。一方、為替相場は19日の利上げ後もジワジワと円安が進み、1ドル=157円台半ばから後半をウロウロ。22日の国債市場では、長期金利の指標である新発10年債の利回りが一時、2.100%に急上昇(価格は下落)した。約26年10カ月ぶりの高水準である。

 日銀の植田総裁は利上げを決定した19日の会見で、利上げ継続の姿勢を見せた一方、目立ったのは歯切れの悪さ。次の利上げ時期について「経済情勢で判断していく」と慎重な物言いをしたがゆえに、円安・長期金利上昇に拍車をかけるジレンマに陥った。経済評論家の斎藤満氏がこう言う。

「積極的に政策金利を上げてインフレを抑える姿勢を見せていれば、ここまで円安になっていないでしょう。植田さんも認めているように、利上げ後も実質金利はマイナスで緩和的な状況が続く。足元のインフレ率3%に対して政策金利を0.75%に引き上げたところで、金融緩和を続けているに等しいのでインフレが収まるわけがない。したがって、マーケットは日銀がインフレを抑えられないと受け止めて円を売る。円が売られるから余計にインフレ懸念が増し、さらに長期金利を押し上げる。こうした悪循環を断ち切るには、『利上げペースは年に1回、半年に1回』というマーケットの予想に反して、なるべく早い時期に再び利上げに踏み込んだ方がいい」

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