「焼肉ドラゴン」鄭義信監督は崔洋一作品の脚本が転機に
映画「月はどっちに出ている」「血と骨」「愛を乞うひと」で数々の脚本賞を受賞した鄭義信さん(61)。2008年に上演され、演劇賞を総なめにした舞台「焼肉ドラゴン」が映画化され上映中だが、鄭さんが初めてメガホンを取った作品でもある。きっかけは崔洋一監督との出会いだった。
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僕は流されるままに生きてきたという感じですから、野望とか夢というものがない。だから、いつも目の前のことを必死にこなすのに精いっぱいなんです。そんな僕にとっての転機はやはり93年に公開された崔洋一監督の「月はどっちに出ている」で脚本を書かせていただいたことですね。
崔監督と組むきっかけになったのは90年に脚本を書いた舞台「映像都市(チネチッタ)」を見に来てくれて、「面白い」って言ってくれたことですね。
それで、Vシネマの「襲撃 BURNING DOG」(91年)の脚本を書くことになったんですが、この時は崔監督とうまくキャッチボールができなかった。初仕事だったからお互いに遠慮があったんでしょう。Vシネってバイオレンスというか、もっと荒々しいものが求められていたと思うんだけれど、トリックとかそういうことばかりを考えちゃって。だから、チマチマした話になっちゃった気がします。