漫画家・倉科遼さん初めて明かす「女帝」シリーズ誕生秘話

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「女帝」発表まで銀座のクラブで使った金額は?

 その時、ああ、夜の世界はバーテンダーをチーフというんだと学んだわけです。初めて銀座のクラブをマジマジと見ましたね。無意識に勉強が始まっていたんですね。そして店を閉め、麻布の焼き肉屋に行ったら、ママに口説かれまして……。「こんな金払いがきれいな飲み方をする人は初めて。あなたは一流の男になれるわ」と言われ、気がついたらロココ調のゴージャスなママの部屋にいました(笑い)。

 そこで目に焼きついた光景があります。トイレに行ったら、隣の浴室の扉が開いていて、中にレースのパンティーが一枚、丸ハンガーに吊るされていた。衝撃でした。それを見て、きっとママは昨日も深夜、帰宅して独りパンティーを洗っていたのかなと。きらびやかな世界に身を置き、華やかな顔立ちをしたママも、帰ると独りの女になる。ここには人間ドラマがあると思ったのが「女帝」を描くキッカケです。

「私に最後の恋をさせて」と言われ……不倫が始まりました。その時、女性は恋をすると少女のようになるんだと知りました。有頂天になったけど、結婚もしていたし、良心の呵責、スキャンダルの怖さも初めて実感しました。

 店が終わった深夜、酔ったママから「会わない?」「会いにきてくれないの?」と電話がかかってくるようになって……。それに、その時期は新しい連載も抱えてプレッシャーもあって余裕がなかった。電話は日増しに激しくなって、ついに「勘弁してくれ」と言って電話を切り、別れました。

 結果的に付き合ったのは半年くらい。体の関係は2、3回ですよ。よく銀座でいくら使ったか聞かれます。「女帝」を発表するまでクラブでお金を払ったのは最初の1回だけです。

 その後、漫画家として行き詰まり、40歳すぎたら引退と思いながら、仕事の合間を縫って日本中を旅しました。札幌ならすすきの、名古屋なら栄、大阪はミナミ、博多は中洲……。日本中どこに行っても繁華街がありました。

 八代亜紀の「舟唄」がかかっているような小さな町の場末の飲み屋ではドアを開けたら客がママの手を握っているような光景がある。夜の世界にはドラマがあると思いましたね。

 その頃、ある編集者に銀座の話の原作をやらないかと声をかけられまして、それで一気に書き上げたのが「女帝」です。これがヒットして60歳までの15年くらいは突っ走りました。でも今は、漫画家、原作者としては「ビッグコミック」の「荷風になりたい~不良老人指南~」が最後でいいかな。

■秀吉の朝鮮出兵の時代の話を舞台化

 舞台の魅力にとりつかれたのは60代半ば。年に2、3本ほど制作してきましたが、コロナ騒ぎが始まって6月の舞台は中止に。9月になって「エグジスタンス~居場所を求めて~」を上演できました。今月28日から「沙也可~海峡を越えた愛~」という初めての歴史ものをやります。秀吉の朝鮮出兵の時代の話です。

 死ぬまでにやりたいのは「荷風になりたい」の舞台化ですね。また私は中国人女性と再婚したので中国をテーマにしたもの……今は天安門事件、香港返還を背景にした女と男の物語「荒海に漂う木の葉のように」という作品を用意しています。

 それからさらに、中国の西太后と東太后の女の情念を描く史劇もやってみたいですね。

◇舞台「沙也可~海峡を越えた愛~」(10月28~31日、渋谷区文化総合センター大和田伝承ホール)
 朝鮮出兵で秀吉軍として渡った武士の中に秀吉に反旗を翻した実在の「沙也可」と呼ばれた男がいた。一族のその後と日本と朝鮮の壮大なロマンを描いている。

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