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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

集団心理的な思考停止…時代の危うさが似ている1964と2021

公開日: 更新日:

 ワクチンの配布は先が見えないし、変異コロナとどこまで長期戦になるか分からないのに、五輪、五輪だ。政府に遮断機を下ろす者はいないのか。

 ワイドショーでも「中止にした方がいい」と誰も言わない。司会者なんかが言うとすぐにクビ切られるんだろうが。国民はどこにも何も言えずに臥薪嘗胆で暮らしている。五輪につぎ込んだ何兆円の投資は誰にも戻ってこない。コロナの補償もなく、ここまで格差と貧困が広がった社会に不況が追い打ちをかけ始めている。

 実は、紹介したい本があった。「1964 東京ブラックホール」(貴志謙介著/NHK出版)という、57年前の五輪成功神話を表としたら、裏でどんな悪夢が社会を悩ませていたかをあぶり出し、今の日本も撃つ内容だ。東京一極集中の建設ブームが去ると、地方も深刻な不況になり、自殺率も世界4位。格差も広がり、汚職も政官の隠蔽事も多かったようだ。世界は冷戦の真っただ中。アメリカの陰謀によるトンキン湾事件で始まったベトナム戦争の特需で、日本は貿易黒字で生き延びたのだと。南ベトナムにまかれた大量の米ドルでサイゴン中にホンダのバイクがあふれた話も思い出した。著者は問う。あの世紀の運動会は日本に「空虚」しか残さなかったのかと。1964年と2021年は時代の危うさが類似してるともいう。

 日本は何百万もの犠牲者を出した朝鮮動乱の特需で復興し、五輪後の大不況は何百万人もが殺されたべトナム特需であがなわれたのだ。そして、我々はコロナ禍に喘いでいる。何が五輪だ!

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