ウクライナ出身力士 安青錦がすべてを語った…単身来日して3年、新入幕で敢闘賞
安青錦新大(力士)
11日に初日を迎える大相撲5月場所。いまや外国人にも絶大な人気を誇り、土俵に上がる力士も国際色豊かな時代だ。来日3年、ウクライナ出身の安青錦は前相撲から始めて10場所目ながら、新入幕を果たした3月の大阪場所で11勝4敗の好成績。敢闘賞も受賞した。相撲巧者として知られた安治川親方(元関脇安美錦)の薫陶を受けている21歳の青年力士に話を聞いた。
──新入幕の3月場所で好成績。何が良かったのですか。
自分の(持ち味である)下からの攻めを出して、それで勝てました。集中できたし、いい場所でした。
──十両と比べて幕内の土俵はどうでしたか?
十両とは全然違いました。お客さんの数も多いし、相手の当たり(の強さ)も全然違う。その中でも、今までやってきたことをしっかり出せました。
──興奮はしましたか?
興奮というか、だいぶ緊張はしましたよ。最初はあまり(幕内の雰囲気に)慣れなかったけど、少しずつ慣れました。
■欧州の相撲は組んでから取る
──相手に頭をつけて、下から攻めるのが持ち味。この相撲を取るようになったのはいつ頃からですか?
相撲を始めた子どもの頃からです。
──ウクライナでは最初、柔道をやっていて、たまたま見かけたマット製の土俵で相撲を取ったのが初めてだそうですね。
そうですね。でも、その時はあまり相撲がわからなかったので。教わったのはウクライナにいる、元レスリングの先生です。ヨーロッパだと、相撲だけやっているという人はいないですね。レスリングや柔道をやりながら相撲もする、という人はいます。
──当時はどんな指導を?
(大相撲とは)全然違いますね。ヨーロッパやウクライナだと、最初から組んで相撲を取るんです。でも、大相撲では立ち合いがすごく大事ですから。
──大相撲の立ち合いは巨漢の力士が頭からぶつかる。怖さはありませんでしたか?
最初は当たるというか止める(という感覚)。今も、相手に合わせて当たって止める、という感じです。まだ僕はそれしかできないけど、もっと稽古してどっしり当たれるようにしたいです。
──師匠の安治川親方にはどのようなことを教わっていますか?
細かいことを教えてもらっています。例えば? ここでまわし取ったら、こうできる。ここをこうしたら、簡単に前に出られるとか……。まだわからないことがいっぱいあるので、細かく教えてもらっています。でも、できないこともいっぱいありますけどね。相撲を取る稽古は1日10番、15番くらい。好きにやらせてもらっているというか、自分のタイミングでやらせてくれます。それでも親方とは稽古の量やトレーニングなどを話し合っています。すごく参考になりますよ。すごい人に教えてもらっているし、私生活も勉強になりますよ。
──現在、体重は。
今は140キロ手前くらいです。145キロくらいは欲しいですね。自分の型に一番合っている体重で戦うのが一番いい。今は(太り過ぎて)動けないとかまったくないから、とりあえずは145キロにはしようかな、と。
──外国人力士は言葉を覚えるのが早いが、来日3年でここまで上手な力士も珍しい。ウクライナにいる時から勉強などはしていたのですか?
いえ、日本に来てからです。
──来日直後は縁のある関西大学相撲部で稽古をしていましたが、その時に勉強などは?
本当に少しだけ、日本語の学校に通ったけど……それよりも、みんなと会話した方が早く覚えるかなと。ウクライナでも外国語が得意だったか? いや、普通でしたね。
──安治川部屋で本格的に日本語を勉強した?
そうですね。最初の頃は全然言葉がわからなかったので、周囲や親方に教えてもらいました。親方も最初に「わからないことがあれば、すぐ聞け。教えるから」と。だから、「これはどういうことですか」とよく聞いています。
──おかみさんが子ども向けの教科書やドリルなどで、日本語を教える部屋もあります。
そうした勉強会はないです。勉強というか、みんなと一緒にいるのが勉強になる。言葉を聞いて、教えてもらって、その言葉を使うこと。しゃべって間違えることは恥ずかしくない。どんどん自分でしゃべって覚える(ことが大事)。語学習得の才能がある? どうですかね。
■丸亀製麺、すき家、吉野家
──日本に来て、驚いたことなどはありますか?
驚いたことは……丸亀うどん(製麺)とか、すき家とか……いま問題になっていますけど。あとは吉野家とか。こんなに安くて、腹いっぱい食べられるのが凄い(笑)。どこに行っても心配せず、生ものを食べられる。ご飯の量もそうだし、お店の数も多い。特に丸亀うどんは大好物です。苦手なものもないですね。大体、食べようと思えば何でも食べられます。白いご飯も結構好きなんで。