健サン、よくぞアタシみたいな馬の骨を拾って下さいました
健サンの唄を聴きながら、この文を綴っております。アタクシめの大恩人、高倉健サンが旅立たれて七回忌を迎え、全く歳月のたつ早さに愕然でして、健サン生きてらしたら九十歳になられる訳で……コノ「対馬酒唄」良いなあ、健サンがそこにいる。酒呑まなかった健サンがこの酒唄、たまらない、シビレます。
アタシが東映にお世話になっていた二十三、四の頃、健サンが「サブちゃん、酒そんなに好きか」「ハイ」「ったく仕様がネーナー」って云いながら笑っていた。あの健サンの顔、全く忘れられませんネー! いや決して好きで呑んでいるんじゃないんです、何か夢が持てず辛くて、ウサを晴らしたくてその……こういう事を云いたかったのですがね、とても云えませんよね。それが今じゃ好きで呑んでんだから、しょうがない男ですよアタシは。
まあしかし言い訳ですが、酒というお陰でこれまで何ンとか、やってこられたというのは事実ではありましてネ。酒なくて何の己が桜かな、酒は正に百薬の長、なんて昔の人は良い事云いますネー。七年前九州博多座の舞台務めている時に、健サンの訃報を知り、何んだかよく解らない状況に嵌ってしまい、参ったことを思い出した。よくぞアタシみたいな馬の骨を拾って下さいました。お陰さまで何んとかアタクシめも生きてられてます。イヤ本当に健サンとの僥倖がなければ、アタシなんぞとてもコノ世界には、入れてません。