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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

田中みな実がドラマ初主演 「悪女について」では多面体の女性を演じて大健闘だった

公開日: 更新日:

 先週、NHKドラマ10「悪女について」の後編が放送され完結した。

 莫大な富を築いた実業家・富小路公子(田中みな実)が、所有するビルから転落死する。自殺か他殺かも不明だ。毀誉褒貶の激しかった公子について、生前の彼女を知る人たちが、小説家(木竜麻生)の取材を受ける形で語っていく。ある者は「ひどい女」だと言い、ある者は「正直で真っすぐな人」だと言う。

 このドラマ、注目ポイントが2つあった。まず、有吉佐和子が45年前に書いた原作小説を、いかにして2023年のドラマにするのか。脚本・演出は山田洋次監督の薫陶を受けてきた平松恵美子だ。

 平松は時代背景をバブル期から現代までに設定し、社会の仕組みや人間の感情を巧妙に操ることで成功を収めていく女性の実像に迫っていた。どんな犠牲を払ってでも、自分が望むものを、自分の力で手に入れる。そんな公子は、確かに単純な「悪女」ではない。

 次の注目点は、ドラマ初主演となる田中みな実である。「悪女について」は過去に何度かドラマ化されている。中でも11年前のTBS版は、ヒロインが沢尻エリカだったことでも話題となった。

 今回、田中は意外なほどの自然体で公子を演じている。虚実が混在する謎の人生。ある時は愛らしく、ある時は狂気さえ感じさせる多面体の女性に挑んでいた。大健闘だったと言っていい。

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