帝釈天から始まる「TOKYOタクシー」は「男はつらいよ」ファンが歩んだ歴史をかみしめる作品

公開日: 更新日:

 それだけでなく、「TOKYOタクシー」は山田洋次作品の中でも、特別な意味を持つ映画と言える。元々この企画は山田監督の、「もう一度倍賞千恵子さんと映画を作りたい」という願いから始まっている。それに合う題材を探して、「パリタクシー」のリメークに行きついたのだ。ここでは壮絶な過去を持つ、アメリカ帰りの老婦人という、「男はつらいよ」シリーズで演じたさくらのような、下町でけなげに生きる女性とはまったく違ったキャラクターに、彼女を挑戦させている。しかも、その老婦人がタクシーに乗車するのは柴又の帝釈天・正門前。これは「男はつらいよ」ファンならお馴染みだが、あのシリーズでは冒頭、寅さんの夢の場面から始まり、それが終わるとさくらが帝釈天の正門に自転車で来るところから物語がスタートする。その正門と別れを告げる場面から、今回の作品は始まるのだ。

 劇中ではその場に、老婦人の世話をしてきた笹野高史演じる司法書士がいて、彼が「またお会いしましょうね」というと、倍賞の老婦人は「無理よ、これで最後」を返すのだが、撮影時、テストで倍賞が笹野に温かみを込めて言葉を返すと、山田監督はもっとドライに拒絶するように言ってほしいと要求した。そのやりとりをタクシーの運転席で聴いていた木村は、この帝釈天の別れには特別な意味があるように感じたという。「男はつらいよ」の定番となっている場所に対する、倍賞の決別の言葉。それを言わせた山田監督の思い。そのことも思い合わせると、これは単なるリメーク作品ではなく、山田監督と倍賞千恵子が歩んできた歴史を背負った、ファンには見逃せない一本なのである。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    聖子&正輝の関係修復と健在ぶりに水を差す…沙也加さん元恋人による「踏み台発言」騒動の余波

  2. 2

    渋谷教育学園渋谷から慶大に進んだ岩田絵里奈を育てたエリート医師と「いとしのエリー」

  3. 3

    石川県知事選で現職の馳浩氏が展開した異様な“サナエ推し” 高市人気に丸乗りも敗北の赤っ恥

  4. 4

    「タニマチの連れの女性に手を出し…」問題視されていた暴行“被害者”伯乃富士の酒癖・女癖・非常識

  5. 5

    侍J山本由伸にドジャースとの“密約説”浮上 WBC出場巡り「登板は2度」「球数制限」

  1. 6

    1979年にオフコース「さよなら」がヒット! 無茶飲みしたのは20代前半

  2. 7

    NHK受信料徴収“大幅強化”の矢先に「解体を」の大合唱…チーフD性的暴行逮捕の衝撃度 

  3. 8

    “OB無視”だった大谷翔平が慌てて先輩に挨拶の仰天!日本ハム時代の先輩・近藤も認めるスーパースターの豹変

  4. 9

    和久田麻由子アナは夜のニュースか? “ポスト宮根誠司”めぐり日本テレビと読売テレビが綱引き

  5. 10

    侍Jで待遇格差が浮き彫りに…大谷翔平はもちろん「メジャー組」と「国内組」で大きな隔たり