板倉滉は「潤滑油」、三笘薫は「探求者」…少年時代から際立っていた2人の異能(川崎U12元監督・髙﨑康嗣)

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DF板倉滉(オランダ1部アヤックス/29歳)

 2026年北中米W杯開幕までいよいよ1カ月。2022年カタールW杯の主軸だった板倉滉(アヤックス)、三笘薫(ブライトン)、田中碧(リーズ)、久保建英(レアル・ソシエダ)の4選手を川崎フロンターレU-12時代に指導した髙﨑康嗣監督(現京都サンガF.C.のU-18監督兼ヘッドオブコーチング)に教え子への熱い思いを聞いた。

  ◇  ◇  ◇

 ──2026年北中米W杯が目前に迫ってきました。まず一番年長の板倉選手のことから。

「滉は2022年W杯の後、2024年アジア杯の挫折や今季移籍したアヤックスでの紆余曲折などがありながらも、着実に成長していると感じています。2025年6月に京都・清水寺で自身が主催するプロジェクト『KCP(Ko creation project)』の体験型イベント&トークショーに僕を呼んでくれたので、その時に久しぶりに会いましたけど、『自分が絶対的中心となって最終ラインを統率していかなければいけない』という強い自覚も口にしていましたね」

 ──板倉選手は2025年10月以降、ケガで代表を離脱。その間に日本はブラジル、イングランドに勝利しました。本人の危機感は強いでしょう。

「W杯に行くためには競争を勝ち抜かなければいけないというのは、本人が誰よりもよく分かっていること。2019年に欧州挑戦に踏み切ってから毎日、厳しい競争を繰り返してきましたから。今も『自分の力で存在価値を証明する』と強い意気込みを持っているはずです。ケガをしている間、特にやり取りはなかったですけど、滉は『やります』『頑張ります』という返事しか返ってこない(笑)。いつも穏やかな笑顔で対応できるのが滉のよさですからね。人と人のつながりを何よりも大事にしている滉だからこそ、世界遺産の清水寺でイベントを開催することができたと思います」

 ──板倉選手は明るい人柄で、社会にも広く目を向けていますよね。

「はい。サッカーの素晴らしさを広く伝えたいと考えて『KCP』を設立。オフシーズンは活動していますし、小児がんの子供たちを助けるためのブルーサンタの活動もしています。『人のために』というのを第一に考えて行動できる滉のような人間は今の日本代表に必要不可欠だと思います」

 ──彼と三好康児選手(ボーフム)は、川崎フロンターレU-12の一期生。自然とリーダーシップが養われたのかもしれません。

「当時U-12の滉はキャプテンではなかったですけど、役職に関係なく、つねに周りを引っ張ってくれていたと思います。それに、彼と敵対関係になる人間は皆無だった。当時の一期生は血気盛んな子ばかり(笑)。僕が『ゼロから1を作るんだ』と号令をかけて、競争意識を煽っていたのもありますが、ピッチ内外で言い合いになるのは日常茶飯事でした。そこにいつも笑顔の滉が入ると、不思議なことに潤滑油のように周りを円滑にしてくれる。本当に助かりました。それは持って生まれた彼の才能でしょうね」

 ──確かに彼は何があっても動じない懐の深さ、器の大きさを備えた選手だと言われます。

「ケガで長く無所属だった冨安健洋選手が今年1月にアヤックス入りしましたけど、滉が『一緒にやろう』と声をかけたのかな、と。『U-20日本代表の頃からトミはいいライバルでいい仲間。自分が出られなくなる可能性もある中で、お互いに切磋琢磨して一緒にピッチに立てばいい』と彼は前向きに捉えて、共闘する道を選んだのかなという気がします。2人揃ってW杯に行ってほしいですね」

MF三笘薫(英1部ブライトン/28歳)

 ──そういう信頼関係は森保一監督が特に大事にしている点です。

「森保監督はW杯優勝を目指していますし、そのためにいろんな個性をうまく掛け合わせてチームを作っています。僕も滉たちを見ていた時代から『個々の尖ったものを大きくしていこう』としか考えていなかった。サッカーはいろんな個性がありますし、〇も□も×も△もいる。それを尊重してこそ面白くなるし、全部いいものを取り込める。強い集団をつくる最善策だと感じます」

 ──尖った個という意味では、三笘選手が突出したものを持っています。

「薫の探求心は際限ないものがありました。川崎フロンターレU-12時代は体が小さく、線が細かったですけど、スピード含めて身体能力は高かった。それに加えて負けん気が強く、理想を貪欲に追い求める姿勢は年長の滉や三好を上回るものがありました。例えば『薫、ボールの受ける位置が気になるぞ』と声をかけると『もうすでに取り組んでいます』と返ってくる。そんなことが頻繁にあった。自分の気づいたことや課題に先回りしてどんどん取り組めるのが薫の凄さです。筑波大学時代から『守備ができない』『ハードワークが苦手』と指摘されていたので、それを克服する努力をしていましたし、プロになってからもパーソナルトレーナーをつけて肉体改造に余念がなかった。課題を乗り越え、武器を磨く努力をとことんやり続けたからこそ、今がありますね」

 ──それでも満足しないのが三笘選手です。

「そうなんです。褒めたところで『理想には達してないので』という話になるだけ(笑)。3月のイングランド戦の時もそうですけど、薫に連絡する時は『ナイスゴールだね。でももっとできるよね』とメッセージを入れるんです。本人も『まだまだです』と返してくる。その貪欲さが薫らしいところです」(=つづく

(聞き手=元川悦子/サッカージャーナリスト、絹見誠司/日刊ゲンダイ) 

▽いたくら・こう 1997年1月27日生まれ、29歳。神奈川・横浜市出身。J川崎U-12の一期生として入団。主将を務めたU-18では1学年下の三笘、2学年下の田中と共闘した。2016年8月にJデビュー。J仙台を経て2019年1月、英プラミアの強豪マンチェスター・シティに完全移籍。オランダのフローニンゲン、ドイツのシャルケ、ボルシアMGでプレーした後、2025年8月、オランダの名門アヤックスに完全移籍で入団した。2019年5月に日本代表初招集。2021年に東京五輪出場。2022年カタールW杯16強入りの原動力となった。身長188cm・体重80kg。

▽みとま・かおる 1997年5月20日生まれ、28歳。神奈川・川崎市出身。地元さぎぬまSCからJ川崎の下部組織に移って高校卒業までプレー。筑波大在籍中の2019年9月にJデビュー。東京五輪後の2021年8月、英プレミア・ブライトンに完全移籍。ベルギーのサンジロワーズでプレーした後、2022年夏からブライトンに復帰。主軸としてチームを牽引している。東京五輪出場後の2021年11月に日本代表初選出。カタールW杯・スペイン戦で田中のゴールを演出した「三笘の1ミリ」で世界的な知名度がアップした。身長178cm・体重74kg。

▽たかさき・やすし 1970年4月10日生まれ、56歳。石川・金沢市出身。茨城・土浦一高から東京農工大。卒業後に指導者の道に進み、土浦一高サッカー部コーチから2002年にJ川崎ジュニアのコーチに就任。同監督、J岩手、J宮崎などで監督を歴任。現在はJ京都のU-18監督兼ヘッドオブコーチング。

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