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小林至桜美林大学教授

1968年、神奈川県出身。91年ドラフト8位で東大からロッテに入団。93年に引退し、94年から7年間米国在住。コロンビア大でMBAを取得し、江戸川大教授を務めながら、2005~14年にソフトバンクホークスの取締役を兼任。現在は、一般社団法人大学スポーツ協会理事、一般社団法人スポーツマネジメント通訳協会会長。YouTubeチャンネル「小林至のマネーボール」も好評配信中。

「いつ・どこで・誰が」トレード話を持ち上げるのか…時には編成部の“やっている感”演出も

公開日: 更新日:

【Q】12日に発表された、DeNAの正捕手・山本祐大と、ソフトバンク尾形崇斗・井上朋也の電撃トレード。4月12日には日本ハムの杉浦稔大が中日に金銭トレードで移籍しました。トレードはどのような流れで話が持ち上がるのでしょうか?

【A】正捕手を放出したDeNAには驚きましたが、一方で中日の場合は開幕から救援陣に故障や不調が重なっており、杉浦投手の獲得は補強意図が分かりやすいケースでした。ただし、トレードが常にこうした緊急補強とは限りません。

 発端は、さまざまです。監督と編成責任者、GMや編成本部長は、毎試合のようにチームの現状を話し合っています。その中で「右の代打が欲しい」「リリーフをもう一枚足したい」など、現場から持ちかけられるケースがあります。監督は監督で情報網を持っており、最初から目当ての選手がいることも珍しくありません。

 編成本部の会議で議題に上がることもあります。こちらは、より経営判断に近い話です。「薄いポジションを補強したい」という前向きなものもあれば、支配下70人枠をあけたい、育成選手を支配下登録する枠をつくりたい、年俸総額を整理したい、という事情もあります。金銭トレードは、取る側には即戦力補強、出す側には枠、予算、選手のキャリアを整理する手段です。

 チームが苦戦しているので「編成部も何か動かなくては」という、半ばアリバイづくりのようなトレードもあります。

 出番に恵まれない選手が「トレードに出してください」と訴えることもあります。その場合、編成担当も可能な限り移籍先を探します。冷たい制度に見えて、選手のキャリアを延ばす救済策にもなります。

 最も頻繁にトレードの話をしているのが、編成部のプロ担当スカウトです。アマチュア担当がドラフト候補を追うのに対し、プロ担当は他球団の一軍、二軍を見て、編成に必要な情報を集めます。球場で他球団の担当者と顔を合わせると、必ずといっていいほどトレードの話になります。

 最初から露骨に交渉するわけではありません。「あの選手、いい選手だよ」「100打席くらい立たせたら面白い」「でも、ウチだと出番がない」といった雑談から入ります。いわば、値札のついていない商品棚です。聞き手が興味を持てば、「一度、上に掛け合ってみる」となり、球団内で検討が始まります。

 つまり、トレード話は突然持ち上がるのではありません。年がら年中、そこかしこで話題には上がっています。ただし、実際に決まるのは年間ほんの数件。条件が合わない、相手球団が出せない、監督が嫌がる、年俸や枠が合わない。ほとんどは水面下で流れます。

 今回、正捕手を放出したDeNAは太っ腹ですが近年、大型トレードが起きにくくなっているのは確かです。ダイエー時代のホークスで根本陸夫さんが成功させた「世紀のトレード」(秋山幸二、渡辺智男、内山智之を西武から獲得し、佐々木誠、村田勝喜、橋本武広を放出)のような、ここまでの大型交換は今後もまず見られないでしょう。

 FA、ポスティング、現役ドラフトの導入により、大物選手にも控え選手にも移籍の選択肢が増えました。監督に造反した選手を懲罰的に放出することも、現在ではまずありません。

 トレードは単なる選手の交換ではありません。戦力、年俸、支配下枠、選手の将来、現場の納得を同時に処理する、球団経営上の意思決定です。

 次回は、球団内での獲得検討と、他球団との交渉の実際をお話しします。

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