「ガチ中華移民」中村正人氏 単なるグルメガイドにあらず…ガチ中華の背景を丹念に掘り下げた本

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「ガチ中華移民」中村正人著

 近年増えた「ガチ中華」とは何か。日本人向けにアレンジされてきた「町中華」とはまったく異なり、中国現地の味を持ち込んだ中国料理および中国料理店のこと。中国語が飛び交い、馴染みのない料理名が並ぶ──という理解は間違ってはいないが、浅いようだ。

「回りくどい言い方になりますが……。日本で学び、働く、若くて経済力のある中国および海外の中国語圏の人たちが増えたために現れた、彼ら好みのガチな現地料理のことです。羊肉の串焼き、東北地方の家庭料理、真っ赤な麻辣燙など珍しいメニューが、2010年代後半から東京を中心に日本各地で急増しました。オーナー、料理人、客のほとんどが中国および中国語圏の人々です」

 1980年代に中国を旅したのに端を発し、ガチ中華の現場を参与観察し続けてきた著者が、急増した背景を丹念に掘り下げたのが本書だ。単なるグルメガイドではなく、ガチ中華という現象から、中国人移民社会の変化と日本社会の現在地を浮き彫りにした。

「在日中国人は、1990年ごろ約15万人でしたが、2000年代から経済力のある中国人が大量に来日・移住するようになり、今は90万人を超えました。故郷の味を必要とする彼らが客になることで、店が成立するんです。象徴的なのが、池袋。1991年に中国食材店『知音』ができ、そこへ中国人が集まり始めた。最初は食材を買う場所でしたが、やがて情報交換の場になり、自分たちのための旅行会社や不動産屋ができ、飲食店が増えていきました。2021年ごろから店が爆発的に増え、今や130軒を超えています」

 首都圏では、池袋の他に高田馬場、新大久保、新宿など埼京線エリア、上野・御徒町エリア、蒲田・川崎・横浜エリア、江東区・江戸川区・足立区エリア、蕨・西川口が集中出店5エリア。

 本書では「ガチ中華」のそもそもの誕生経緯も解く。改革開放以降、上海や深圳、広州といった沿海地方の都市が「世界の工場」化し、そこで働くため、1980年代に中国各地の人たちが大量に移住したのが発端となった。

「そうした彼らが故郷の料理を沿海の都市に持ち込み、街の中に地方料理店が次々できていったんですね。そして中国経済が成長すると国内旅行のブームとなり、中国国内で“地方料理ブーム”が起きた。さらに、その流れが今度は海外へ出ていった。経済力を持った中国人が、世界各地へ移住。留学し、働くようになり、彼ら自身が客となって『自分たちの故郷の味』を求めるようになったわけです。つまり、ガチ中華は突然日本に現れたものではなく、中国社会の経済成長の延長線上で生まれた現象です」

 なんと、今や北米や欧州、東南アジアの国々にも、日本同様にガチ中華の店が増えているという。

 最新情報としては、池袋などでは店舗数が飽和状態となり、競争も激化。日本人客を取り込もうと、1000円くらいでランチビュッフェを提供する店が珍しくなくなっているとか。

「日本語メニューを置く店もあり、敷居は高くないので、少し勇気を出して入ってみてください」

 ガチ中華初心者へのおすすめは、秋葉原の羊肉料理の「香福味坊」、魚の蒸し煮が名物の池袋の「ムーさんの蒸鍋館」、6種の紹興酒の量り売りをする新宿御苑の「南方急行」だそう。

 ほか麻辣、ご当地麺などガチ中華の代表4ジャンルもコラムで紹介する。 (太田出版 2640円)

▽中村正人(なかむら・まさと) 1963年生まれ。東京ディープチャイナ研究会(TDC)代表。Forbes JAPANオフィシャルコラムニスト。「間違いだらけの日本のインバウンド」「ウラジオストクを旅する43の理由」など著書多数。TDC編「新版 攻略! 東京ディープチャイナ」も執筆。

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