三笘薫は「もともとはパサー」 ドリブル突破を生み出す久保建英との共通点(川崎U12元監督・髙﨑康嗣)

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MF三笘薫(英1部ブライトン/28歳)

 3月のイングランド戦で値千金の決勝弾を叩き出した三笘薫(ブライトン)に久保建英(レアル・ソシエダ)、田中碧(リーズ)といった中盤のタレントたちがどう絡んでいくか。これも森保ジャパンの成否を左右しそうだ。彼らを川崎フロンターレU-12時代に指導した髙﨑康嗣監督(現京都サンガF.C.のU-18監督兼ヘッドオブコーチング)に引き続き話を聞いた。

  ◇  ◇  ◇

 ──三笘選手は今の日本代表ではWBが主戦場となっていますが、どのポジションが最適解だと考えますか?

「薫はもともと中央の選手。今の(基本布陣)3-4-2-1だったら、シャドウですかね。サイドもできるんですけど、パスも仕掛けもできて、フィニッシュで脅威を出せる選手。もっとゴールにこだわってほしいので、シャドウが適正だと思います。ただ、3月のイングランド戦を見ても分かる通り、今の代表は中と外を流動的に入れ替えながら戦える。左に関して言えば、中村敬斗(スタッド・ランス)が中に入って薫が外に行っても守備は機能しますし、右もタケ(久保建英)が開いて律(堂安=フランクフルト)や純也(伊東=ゲンク)が中に入る形でも全く問題ない。みんなが多彩な役割をこなせるので、戦い方の幅が広がりますね」

 ──三笘選手も高いレベルの万能型です。

「U-15くらいまではボランチもやっていましたから、ボランチもできないわけではない。彼はもともとパサー。ドリブル突破している姿が印象的かもしれませんが、パスをさせてもうまいですし、下がっても十分プレーできるんです。でも、僕は、尖ったものを大きくするために、薫が下がってプレーするのがもったいないと思い、あえてドリブルさせてゴールに向かうプレーを要求しました。薫が全然抜こうとしないから、能力を出しきれずに終わる試合が多々あった。『薫、出し切ったか?』『101(%)を出す作業をしているか?』とよく問いかけましたけど、101%の力をだしていくことが必要なように映った。その努力が自分以外の10人を輝かせ、自分自身を輝かせることにつながる、と彼にはよく話していました」

 ──それはいつ頃?

「小6の夏以降ですね。当時の彼はキャプテンで、全小(全国少年サッカー大会)にも出たので、自分がチームの中心として全部やらなければいけないという意識が強かったんだと思います。全小が終わってひと段落した後、僕は『パスしていてももったいないから抜いてくれ』『局面を変えてくれ』と指示しました。パスして味方がゴールを奪っても怒られるんで、本人は『なんで?』と疑問に思ったかもしれないけど、とにかく強引に行ってほしかった。パスしてアシストを記録して僕に怒られたのは薫くらいでしょうね(笑)」

 ──今、京都のU-18監督を務めています。尖った個を持つ子供がいたら、三笘選手と同じように向き合いますか?

「"どこで仕掛けるべきか"は考えさせると思います。ただ、薫の場合はドリブルしたからうまくなったんじゃなくて、もともとの判断スピードや頭の回転が速いからドリブルができる。いろんなプレーの中から自分で選択して仕掛けているだけのこと。それは今一度、頭に入れておく必要がありますね」

 ──久保選手も三笘選手と同じようにプレー選択を瞬時に変えられます。

「薫がU-15に上がった後、タケが川崎フロンターレU-12に来ましたけど、ある時ゴールを取るために『ドリブルなんか必要ないじゃん。パスの方が速いよ』と言うんです。『じゃあ何で抜いたの?』と問うと、『ドリブルで行った方が得点の確率が高いでしょ』と。その通りの状況だったので感心しましたね。彼もまたパサーですけど、ドリブルもシュートもできる選手。でもよくない時は全て『自分が、自分が』となってしまう。自分なりに最善の判断を見出して、判断の優れたプレーヤーに戻ってきた。タケの方が少し直線的ではあるんですけど、2人は通じるところがあると感じています」

 ──2022年カタールW杯では三笘選手がジョーカー、久保選手もハードワーク担当のような位置づけでしたが、今回は攻撃の絶対的中心です。

「薫にはチームを勝たせるセカンドストライカーとして活躍してほしいですし、前回取れなかったゴールを取ってほしい。チームが勝つためにどっちを選ぶかというと、薫はシュートよりパスを選ぶと思いますけど、その頭のよさは今の日本に欠かせないですね。タケも重要な役割を担うので、自分のよさを出し切ってほしいと願っています」

MF田中碧(英1部リーズ/27歳)

 ──最後に田中碧選手ですが、第2次森保体制の日本代表では少し難しい立場にいます。

「デュッセルドルフからリーズに行って、プレミアリーグに昇格して今ですが、自分の中でもがいていたのかなと。『何かしなきゃいけない』という危機感が強かったのかなという気がします。それ自体はいいことなんですけど、空回りするのが碧の課題。彼には『人を活かして自分も活きる』という長所がありますし、それを忘れてほしくない。2.5列目をさまよいながら、みんなをつなぐ中心にいるのが碧のよさ。派手なスルーパスをガンガン出せる選手じゃないですけど、自分の活きる道を必ず見出せると信じています」

 ──連絡は来ますか?

「碧は僕のことが怖いので、『何か言われるんじゃないか』と気にして連絡してこないです(笑)。1人っ子でマイペースなところもあるので。ただ、プロになった年に『碧、今の努力では足りない。人の3倍やってはじめて勝負になる』と話したことを実行してくれた。だからこそカタール(W杯)に行けたんです。その後の4年間も、人一倍の努力は続けている。それがW杯で実ってほしいと思います。

(聞き手=元川悦子/サッカージャーナリスト、絹見誠司/日刊ゲンダイ

▽みとま・かおる 1997年5月20日生まれ、28歳。神奈川・川崎市出身。地元さぎぬまSCからJ川崎の下部組織に移って高校卒業までプレー。筑波大在籍中の2019年9月にJデビュー。東京五輪後の2021年8月、英プレミア・ブライトンに完全移籍。ベルギーのサンジロワーズでプレーした後、2022年夏からブライトンに復帰。主軸としてチームを牽引している。東京五輪出場後の2021年11月に日本代表初選出。カタールW杯・スペイン戦で田中のゴールを演出した「三笘の1ミリ」で世界的な知名度がアップした。身長178cm・体重74kg。

▽たかさき・やすし 1970年4月10日生まれ、56歳。石川・金沢市出身。茨城・土浦一高から東京農工大。卒業後に指導者の道に進み、土浦一高サッカー部コーチから2002年にJ川崎ジュニアのコーチに就任。同監督、J岩手、J宮崎などで監督を歴任。現在はJ京都のU-18監督兼ヘッドオブコーチング。

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