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スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

ジョージ・マーティンのレコード観とライブ観 彼の金言を知ればAIなんて怖くない

公開日: 更新日:

特別編「5人目のビートルズ~ジョージ・マーティン」②

 今回も前回に続いての特別編として、ジョージ・マーティン(以下「Gマーティン」)を取り上げる。内容も前回同様、新田和長による名著『アーティスト伝説』(新潮社)から彼の言葉を引く。

 日本ポップス界の重鎮、「ミスター・ニューミュージック」といってもいい新田和長は、Gマーティンに「弟子入り」しようとイギリスに馳せ参じ、本人から直々にさまざまな金言を聞くのだが、それがいちいち素晴らしいのだ。

──「レコードでしかつくれない音楽をつくろうとしてきた」

 と、ある日Gマーティンは言ったという。その意味合いとして、

──「例えば写真ではなく絵画のような音楽のことだ。ミュージシャンがスタジオで演奏したり歌ったりしている音楽をそのままコントロール・ルームで再現するのでなく、それを聴いて何を感じ、何を伝えたいか、そのためにはどの楽器(歌)のどの演奏部分をどう強調したり手を加えればいいか、そういうことをイメージするのが大事なんだ」

 ここでビートルズの楽曲をプロデュースするときの彼の基本スタンスが見えてくる。4人の生演奏、生歌をそのまま録音するのではなく「どの演奏部分をどう強調したり手を加えればいいか」を考えて、アドバイスをし、たまには自分で演奏までしたりして「レコードでしかつくれない音楽」をつくる。これぞ彼の仕事だったのだ。

 こんな発言も。少々長いが、略せない迫力がある。全文読まれたい。

──「私はライブパフォーマンスを信じています。完璧ではないかもしれないですが、より人間的で、よりエキサイティングで満足感も与えてくれるのです。どんなにテクノロジーが進歩しても、音楽を進歩させるわけではないということは覚えておいてほしいです。素晴らしい音楽というのは、優れたミュージシャンが質のいい楽器を奏でたときに生まれてくるもの。我々にできることは最良の方法でその音楽を永遠に記録することなのです」

 先のレコード観と、このライブ観。一見矛盾するようだが、よく読むと何ら矛盾していないことが分かるだろう。

 これを読んで私が感じたのは、今音楽業界に蔓延するAIへの恐怖感のことだ。正直AIのことなど分からないが、Gマーティンの言葉を見ていると、何となく大丈夫と思えてくるではないか。

 そんなGマーティンからのサポートを得ながら、ポールが完成させたのが、次のアルバムに収録された、あの超絶名曲だった。

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