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スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。早大政治経済学部卒業後、博報堂に入社。在職中から音楽評論家として活動し、10冊超の著作を発表。2021年、55歳になったのを機に同社を早期退職。主な著書に「中森明菜の音楽1982-1991」「〈きゅんメロ〉の法則」「サブカルサラリーマンになろう」「大人のブルーハーツ」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた最新刊「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」(日刊現代/講談社)が絶賛発売中。最新刊「日本ポップス史 1966-2023: あの音楽家の何がすごかったのか」が11月10日に発売。ラジオDJとしても活躍。

まずはリバプールの悪ガキの初期衝動に身を委ねてほしい

公開日: 更新日:

アルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」(1963年3月22日発売)

 2月11日。日本では「建国記念の日」だが(決して「建国記念日」ではない)、ロック史的には「ビートルズのファーストアルバム録音日」である。ということは、ある意味で「ロックンロール帝国の建国記念日」ということになる。

 録音に費やされたのは1963年2月11日のたった1日。私の苦手なあの人的に言えば「歌って歌って弾いて弾いてまいりました」という感じだろう。

 録音場所は、のちに世界でいちばん有名なスタジオ「アビイ・ロード・スタジオ」として知られるEMIスタジオである(「EMI」はレコード会社の名前)。

 やや語呂が悪く感じるタイトルは同年1月リリースの先行シングルであり、このアルバムにも収録された曲名から。

 ジャケットでほほ笑むのは、若き4人の姿。のちのアルバムのうっとりするようなアートワークに比べると、何だか文字もゴテゴテしていて「『プリーズ・プリーズ・ミー』と『ラヴ・ミー・ドゥ』と他12曲」(筆者訳)という紹介コピーもダサいが、まだまだ世界的に、いや全英的にも知られていないリバプールの悪ガキにあてがわれるのは、まぁこんなところだろう。

 ちなみに撮影場所はEMIの本社。のちに、このときのフォトセッションで撮影された別の写真が『ザ・ビートルズ1962年~1966年』というベスト盤、通称「赤盤」で使われる。

 収録曲14曲のうちオリジナルが8曲でカバーが6曲と、オリジナルの方が多い。これは当時としては画期的なことで、バンドとしてのオリジナル志向がうかがえる。世界でいちばん有名なソングライターチーム「レノン=マッカートニー」誕生の瞬間だ。

 リードボーカルは、ジョンが6曲で、ポールの4曲をしのぐ。ジョンがまだ実質的にリーダーだったことを示す──。

 とカタログ的な情報はいくらでも書けるが、こちらもあの人的に「そんなことより」、これらこまごまとしたあれこれをぴょんと超越するロックンロール初期衝動に耳を澄ませてほしい。

「俺たち、ロンドンの広いスタジオで、マジでロックンロールしちゃってるよ」

 正直、まだまだ荒削りな部分もある、いや荒削りな部分しかないのだが、それでも『アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア』に始まり、『ツイスト・アンド・シャウト』に終わる、嵐のような30分強に、まずは身を委ねてほしい。

 その後、世界中の若者をシビれさせてシビれさせてシビれさせる音の源流が、ここにある。

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【連載】スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ

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