作中に忌野清志郎の歌をちりばめた親子の物語 「明日、あたらしい歌をうたう」角田光代著
「明日、あたらしい歌をうたう」角田光代著
新は、幼い頃から家に飾られていたミュージシャンの写真を、父親だと信じ育った。「この人誰?」と聞いたら、母親が「それ、おとうさん」と言ったからだ。
中学生になったある日、家にあったCDに写っている人と、「父親」が同じ人だと気づいた。友だちの匠人と陽菜に打ち明けたところ、その人は有名なロックミュージシャンで、新が生まれた数カ月後に亡くなっていた。そしてどうやら新は「隠し子」のようだ。
その“事実”をキッカケに、新たち3人はバンドを組むことに。新はギターを習い、声をはりあげて歌うと、世界がくっきり色づいて見え、喜びを覚えた。しかし、中学3年の夏休み、届いた1通の手紙により、自分は事故死したサラリーマンの子だと知る。自分にはすごい遺伝子も何もなかった──。新は再び、世界の色を失ってしまう。
新少年と少女時代に耳にした音楽に救われた母・くすかとの物語を、忌野清志郎の歌をちりばめながら交互に紡いだ連作集。
偶然耳にした音楽で世界の見え方がガラリと変わり、縁がつながり、生きていく支えや希望になるさまが静かな筆致でつづられる。自分にとっての偶然に思いを馳せる読者も多いだろう。 (水鈴社 1870円)



















