『ホールド・ミー・タイト』聴きどころは微妙なズレを含んだジョンの1人ユニゾン
『ホールド・ミー・タイト』
シャネルズ『街角トワイライト』(1981年)の歌い出しが「♪ホールド・ミー・タイト」。ほぼ同時期にこの曲を聴いて「タイト」が「きつい」という意味だと知った。
そしてほぼ10年後に会社員となって、「タイト」がスケジュールに対する形容として、ほぼ日常的に使われるのに驚いた。
という駄話から始めなければならないほど、この曲について文字数を埋めるのが「きつい」。
ポールの曲なのだが、同じくポップなロックンロール『アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア』(コード進行も似ている)で見せた輝きを、この曲は携えていない。
あと、LPのA面1曲目で『イット・ウォント・ビー・ロング』という先頭打者ホームランを見た・聴いた後だ。B面2曲目という下位打線でのこの曲は分が悪い。
さらに「きつく抱きしめてくれ」を繰り返す歌詞も凡庸。
アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』で録音にチャレンジしながらも、収録が見送られ、ここで復活したのだが、わざわざ復活させる理由などあったのだろうか。
という見方は、どうも私の個人的意見ではないようで、ジョンも、さらには当のポールも辛口評価だったよう。なかなかに「きつい」1曲である。
■『ナット・ア・セカンド・タイム』
やっぱジョンでしょう、『ウィズ・ザ・ビートルズ』は。
ここでジョンの声をよく聴いてほしい。同じメロディーを2回重ねて歌っていることが分かるだろう(要するに「1人ユニゾン」)。結果、微妙なズレを含んだふくよかな声質となって響いてくる。
俗に「ダブルトラック」と言われるこの手法をジョンは好み、ビートルズ中期には、一度歌うだけで、自動的にダブルトラックにしてくれる「ADT」なる機械をスタッフに作らせるほどだった。
サウンドのポイントは、ジョージ・マーティンによる低音ピアノソロ(薬師丸ひろ子『Woman』─84年─を想起)。あと試聴リンク再生時間「1:14」からの「♪フォー・ユーーーーー・イェイ」というジョンお得意の「メロ変え」。
82年、日本テレビが、来日公演映像を含むビートルズのリクエスト番組を放送したのだが、有名人がおすすめ曲を順繰りに紹介していくコーナーで、若き佐野元春が、英語風発音で「Not a Second Time!」とビシッと言った瞬間が、今でも忘れられない。
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