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スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。早大政治経済学部卒業後、博報堂に入社。在職中から音楽評論家として活動し、10冊超の著作を発表。2021年、55歳になったのを機に同社を早期退職。主な著書に「中森明菜の音楽1982-1991」「〈きゅんメロ〉の法則」「サブカルサラリーマンになろう」「大人のブルーハーツ」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた最新刊「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」(日刊現代/講談社)が絶賛発売中。最新刊「日本ポップス史 1966-2023: あの音楽家の何がすごかったのか」が発売中。ラジオDJとしても活躍。

『アイム・ア・ルーザー』雑なハーモニカの使い方に表れる「時代の寵児」の影響

公開日: 更新日:

アルバム『ビートルズ・フォー・セール』(1964年12月4日発売)③

■『アイム・ア・ルーザー』

 1曲目の『ノー・リプライ』に続いて、2曲目のこの曲もジョンの曲。

 1964年8月28日、ビートルズがついに、ニューヨークのホテルでボブ・ディランと対面する。

 すでに前年『風に吹かれて』をリリースし、乗りに乗っている、というか、まさに「時代の寵児」となっているディランだ。

 有名な話だがこのときディランは、ビートルズの面々にマリフアナを教えている。つまり、まぁいってみれば、中期以降のドラッグ期ビートルズへのキッカケを作ったのがディランということになる。

 メンバーの中で、もっとも好奇心旺盛だった当時のジョンが、目の前の時代の寵児から影響を受けないはずがない。この『アイム・ア・ルーザー』は、ジョンがディランの影響下で作った最初期の曲となる。


 歌い方はちょっとディランの物まねのようになっているし、『プリーズ・プリーズ・ミー』とはまるで違う、ちょっと雑なハーモニカの使い方もまさにディラン的。

 そして「ぼくは負け犬」と繰り返す、しみったれた歌詞にも、ディランに触発された影響が大きかったのではないか。

 ディランにも触発されながら、内省的な思索を深め、ジョンが、どんどん「あのジョン・レノン」になっていく。

■『エヴリ・リトル・シング』

 ビートルズを聴いておくと、その後の洋楽・邦楽について「あ、これもビートルズが元ネタなのか」と何度も驚くことになる。

 今や日本で「エヴリ・リトル・シング」といえば、持田香織のいるあのユニット、略して「ELT」のこととなるが、元ネタはこの曲だ。

「あの娘がしてくれる、どんな小さなことも僕のため」──ついさっき「俺は負け犬」と歌っていたのに、ここではめっちゃリア充やんけ。


 サウンド的には、何といってもティンパニの導入がポイントだ。すでに述べたように、4トラックのレコーディングになっていて、録音できる音数に余裕が生まれた結果、こういうチャレンジも可能になった。

 ティンパニを叩いているのはリンゴ。ついこの間まで、リバプールの悪ガキだったリンゴが、クラシック打楽器の王様みたいなティンパニを叩くのは、どんな気分だったろう。♪ダッ・ダン!

 そういえば、私が中1のとき、アリス『夢去りし街角』(79年)という曲に入っているティンパニを「かっこいいな」と思いながら聴いていたのだが──あれもビートルズが元ネタなのか。♪ダッ・ダン!

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