著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

『アイム・ア・ルーザー』雑なハーモニカの使い方に表れる「時代の寵児」の影響

公開日: 更新日:

アルバム『ビートルズ・フォー・セール』(1964年12月4日発売)③

■『アイム・ア・ルーザー』

 1曲目の『ノー・リプライ』に続いて、2曲目のこの曲もジョンの曲。

 1964年8月28日、ビートルズがついに、ニューヨークのホテルでボブ・ディランと対面する。

 すでに前年『風に吹かれて』をリリースし、乗りに乗っている、というか、まさに「時代の寵児」となっているディランだ。

 有名な話だがこのときディランは、ビートルズの面々にマリフアナを教えている。つまり、まぁいってみれば、中期以降のドラッグ期ビートルズへのキッカケを作ったのがディランということになる。

 メンバーの中で、もっとも好奇心旺盛だった当時のジョンが、目の前の時代の寵児から影響を受けないはずがない。この『アイム・ア・ルーザー』は、ジョンがディランの影響下で作った最初期の曲となる。


 歌い方はちょっとディランの物まねのようになっているし、『プリーズ・プリーズ・ミー』とはまるで違う、ちょっと雑なハーモニカの使い方もまさにディラン的。

 そして「ぼくは負け犬」と繰り返す、しみったれた歌詞にも、ディランに触発された影響が大きかったのではないか。

 ディランにも触発されながら、内省的な思索を深め、ジョンが、どんどん「あのジョン・レノン」になっていく。

■『エヴリ・リトル・シング』

 ビートルズを聴いておくと、その後の洋楽・邦楽について「あ、これもビートルズが元ネタなのか」と何度も驚くことになる。

 今や日本で「エヴリ・リトル・シング」といえば、持田香織のいるあのユニット、略して「ELT」のこととなるが、元ネタはこの曲だ。

「あの娘がしてくれる、どんな小さなことも僕のため」──ついさっき「俺は負け犬」と歌っていたのに、ここではめっちゃリア充やんけ。


 サウンド的には、何といってもティンパニの導入がポイントだ。すでに述べたように、4トラックのレコーディングになっていて、録音できる音数に余裕が生まれた結果、こういうチャレンジも可能になった。

 ティンパニを叩いているのはリンゴ。ついこの間まで、リバプールの悪ガキだったリンゴが、クラシック打楽器の王様みたいなティンパニを叩くのは、どんな気分だったろう。♪ダッ・ダン!

 そういえば、私が中1のとき、アリス『夢去りし街角』(79年)という曲に入っているティンパニを「かっこいいな」と思いながら聴いていたのだが──あれもビートルズが元ネタなのか。♪ダッ・ダン!

■「日本の新しい音楽1975~ "New Music" from 1975」(4月24日発売)
 スージー鈴木氏の大好評連載が書籍化されました!Amazonで予約受付中です!

■著者最新刊「日本ポップス史1966-2023~あの音楽家の何がすごかったのか」 絶賛発売中!Amazonでのお求めはこちらから

■好評連載「沢田研二の音楽1980-1985」をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」(日刊現代/講談社)発売中!

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希をヤンキースが強奪へ…大谷翔平&山本由伸を奪われた名門が企んだ雪辱戦

  2. 2

    AKIRA版はなかったことに? 反町隆史GTO放送開始で荒ぶる「2012年派」

  3. 3

    ゾンビたばこ広島に黒田博樹監督待望論 「打てない、守れない、人気ない」三重苦で新井監督はクビ不可避

  4. 4

    佐々木朗希は一軍復帰1試合でまた抹消…どれだけ脆弱でもドジャースが欲しがったワケ

  5. 5

    近藤真彦「合宿所」の思い出&武勇伝披露がブーメラン! 性加害の巣窟だったのに…「いつか話す」もスルー

  1. 6

    “令和の武器商人”こと小泉進次郎防衛相の「核ありき発言」に自民国防族もカンカン

  2. 7

    ついに1ドル=163円突入で「円安倒産」ラッシュ深刻懸念…すでに前年同期から3割増

  3. 8

    中森明菜のタモリ評「心の底からホッとします」は国民の総意か? サングラス姿と性格的な3要素

  4. 9

    「24時間テレビ」放送1カ月前に日テレ局内に流れる微妙な空気…猛暑の中の星野真里マラソンに大逆風

  5. 10

    震災で家族を心配する選手たちに星野監督が怒号「おまえらは野球だけしとりゃあええんじゃ!」