馬場典子アナの「人生の転機」は日テレ入社7年目“福澤一座”の旗揚げ公演の初舞台
アナウンサーに大事なものは何かを気づかせてくれた
そこで初めてそれまでとの違いを自覚したというか。舞台に立ったことで表現の幅が広がり、普通に読んだだけなのに、うまくなっていたということだと思います。そして気がついたのは、ずっと感情を抑えて読むように教わってきましたが、感情がないこととイコールじゃないことでした。フラットに伝えるにしても、しっかり伝えたいという熱意や、届けようという思いの強さが大事ということも舞台で教えてもらった気がします。
14年に「ZIP!」を最後にフリーになり、大阪芸術大学に声をかけていただき、アナウンス音声表現コースで教えています。学生にはアナウンス技術は大事だけど、技術は鍛えれば誰でもうまくなるけど、それよりも大事なのは本気で伝えようとする思いだと話しています。アナウンサーとして気がついたこと、舞台で経験したことをひっくるめて考えると、自分の“思い”や“肚”の部分でどれだけ本気かということが伝えるだけにとどまらない、“伝わる”コミュニケーションには欠かせないと感じています。
■悔やんでも悔やみきれない、つかこうへいさんからのオファー
後悔することもありますね。日テレ時代の08年、交流させていただき、福澤一座も見に来てくださった、つかこうへいさんから、舞台「幕末純情伝 龍馬を斬った女」に出てくれないかとお声をかけていただいたことがあります。すごくありがたい話なのですが、立場的にも物理的にも無理だと思って、上司にも相談すらしないでお断りしました。福澤一座では拙いお芝居で周りに迷惑をかけたんじゃないかという気持ちもありましたし。
しかも、その作品を見たら、私にオファーがあった役が見当たらなくて。その後、病に倒れたつかさんから病のことは伏せて、今後、電話もメールもやめる旨のメールが届き、それっきり。まさかそんなことになるとは思ってもいなかったこともあるけど、あまりにも申し訳なさ過ぎるし、情けないです。後悔しても後悔しきれません。
本気で舞台と向き合って、人生を捧げ、たくさんの人を育てたような方が私に声をかけてくださったわけで、私にはその思いの深さがわかっていなかった。せめて本気で上司に掛け合うことぐらいはできたはず。遠慮は何かを差し出してくれた相手の厚意を受け取らないことにもなり得る。そこが配慮とは似て非なるものと痛感しました。だって、つかさんの舞台には、やっぱり出たかったのですから。
簡単ではありませんが、たとえ自信がなくても自分の気持ちには正直に向き合い、少しでも後悔のないようにベストを尽くすことの大切さを学びました。
(聞き手=峯田淳)
▽馬場典子(ばば・のりこ) 1974年、東京都生まれ。97年、日本テレビ入社、2014年に退社し、フリーに。アミューズに所属。大阪芸術大学放送学科教授。「歌謡プレミアム」(BS日テレ)、「プレバト‼」(TBS系)などに出演中。



















