著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

猛獣の冬眠直前、最後のソロ合戦で名実ともにビートルズは「4人」になった

公開日: 更新日:

アルバム『アビイ・ロード』(1969年9月26日発売)⑩

1曲目(無料)から読む

■『ゴールデン・スランバー』

 前回紹介した『サン・キング』からのジョンの曲を中心としたメドレー前半は、正直言って、冴えない曲をつないで形にしたという感じだったが、ポールが主導する、メドレー後半の4曲(というか3.5曲か)は迫力がグッと上がる。

↓………ここから続き………

 まず『ゴールデン・スランバー』は正直、メドレーの中に埋もれさせるのがもったいない名曲だ。ポールのがなり声も素晴らしい。


 タイトルは「黄金の眠り」、転じて「快眠」ぐらいの意味。ビートルズという猛獣が冬眠に入るタイミングの曲としてふさわしい。

■『キャリー・ザット・ウェイト』

「重荷を背負って生きていけ」という、メッセージの曲である。

「ビートルズがいないという重荷を背負って、来たる70年代を生きろ」というポールからのメッセージのようにも聴こえてくる。途中『ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー』のフレーズが出てきて、いわゆる「リプライズ」(アルバムの中ですでに流れた曲が再度登場すること)の形となる。こういうのを作らせたら、ポールは実にうまい。


 ややぎこちない感じでつながれて、次の曲へ。

■『ジ・エンド』

 そしていよいよ「ジ・エンド=大団円」。演奏者としてのビートルズの総括ソング。

 まずは、やはりリンゴによるドラムソロだ。試聴リンク再生時間「0:20」から、ステレオ録音された立体的なサウンドで、いかにもリンゴという感じでぐんぐんスウィングする名ソロが聴ける。


 その後は、ポール→ジョージ→ジョンの順によるギターソロ合戦だ。

 バランスの取れたポール、雑に弾くジョンの間で、ジョージのフレーズが傑出。特に「1:21」からの飛翔するフレーズの華やかさたるや。『オクトパス・ガーデン』のイントロと間奏と並ぶ、本アルバム、ジョージによるベストプレーである。

 この『ジ・エンド』によって、「ジョンとポール」ではなく、名実ともにビートルズは4人となったのだ。

 締めの歌詞「最終的に(ジ・エンド)君が得る(テイク)愛は、君が生み出す(メーク)愛の量と同じ」というフレーズは「愛=LOVE」という言葉が特別な意味を持った60年代の終わりに実にふさわしい。

■『ハー・マジェスティ』

「あんまりマジになるなよ」という感じのポールの小曲で締め。最初の「♪ダーン」は元々『ミーン・ミスター・マスタード』のエンディングの音だったらしい。


「♪女王陛下はいかした娘」という歌詞は、イギリス人の軽妙なユーモア感覚を表していると言われ聞かされ続けてきた。

 有名人が女性首相を批判すると炎上する57年後の日本とえらい違いやな。

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【連載】スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ

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