「炎と水」山岡淳一郎著/集英社(選者:佐高信)
政治屋には理解できない中村哲の思想と行動
「炎と水」山岡淳一郎著
トランプに制裁された国際刑事裁判所所長の赤根智子と、首相の高市早苗の座っている椅子を、いますぐ取り替えたい。高市所長なら、トランプに抱きついて制裁を解除するよう懇願するだろうし、赤根首相ならトランプに遠慮せずに物価高や円安に断固とした対策を取るだろう。
この国に人材がいないわけではないのである。とりわけ政界にひどい人間が集まっている。そこで改めてアフガニスタンで亡くなった中村哲に思いを馳せたい。
2008年11月5日、参議院の外交防衛委員会に参考人として呼ばれた中村は、元陸上自衛官の自民党議員、佐藤正久の「治安維持ではなく復興支援で自衛隊を運用するのはどうか」という質問にこう答えた。
「ならば、(復興支援を担う)JICA(国際協力機構)をぜんぶ引き揚げて自衛隊員を送ればいい。できないのなら、麻生首相自ら銃を握って前線に立ってもらいたい。そのうえで考えてほしい」
麻生太郎はもちろん、高市も「自ら銃を握って前線に立つ」覚悟などないだろう。武器では平和は守れないことを中村は実践で示したのに高市や麻生はその道を進もうとせず、いたずらな軍拡に走って、国民の暮らしを窮乏させている。
中村自身の本を含めて、中村についての本はたくさん出ているが、副題の「名もなき人たちの旅」が示すように、多くの人の証言によって改めて中村を浮かび上がらせたところにこの本の特色がある。
アジアのノーベル賞といわれるマグサイサイ賞はじめ、中村は多くの賞を受けていたが、国家が個人を表彰する勲章は拒否していた。
2016年の夏、2カ月ぐらい休暇を取る予定で日本に帰った中村が2週間少々で帰ってきた。なぜかと尋ねると、日本政府から旭日双光章を与えるといわれて、嫌だったから帰ってきたという。「おれは、そんな勲章は絶対にもらわん」とはねつけていたが、ペシャワール会のことを考えて受けてくれと懇願されて受けたとか。
勲章などでごまかさずに、イラクへの自衛隊派遣などをやめることが中村に報いる道だったろう。しかし、高市などの政治屋に中村の思想や行動がわかるはずがない。カタログハウス発行の「通販生活」が「アフガンいのちの基金」の告知記事を載せ、払込書も同封したことも書かれている。 ★★★



















