近藤史恵(作家)作者がこの街に住み続けている理由がわかる
8月×日 スペイン旅行を控えているので、「ニューエクスプレスプラス スペイン語」(白水社 2310円)を購入。フランス語歴はそこそこ長いので、同じ語系のスペイン語はサクサク進む。とりあえず、半分くらいまで一気に進めたが、フランス語にない点過去とやらが出現して、歯ごたえが出てきた。語学は長年の趣味ではあるが、結局、フランス語以外は、あんまり身についてない。ちょっと囓ってはやめることの繰り返しである。なんか多頭飼い崩壊現場っぽい。
「またスペイン語なんか拾ってきて! もといたところに捨ててきなさい」
「今度はちゃんとやるもん。ほら、Yo soy Fumie」
「そんなこと言ってロシア語もアイスランド語もちゃんと世話せず、野良になっちゃったじゃないの!」
「だって、あの子たち難しいんだもん。格変化があって全然懐いてくれないし。スペイン語は、ほら、こんなに人懐っこいもん」
で、こんなわたしにとって、イタリア語に惹かれ、ローマに移住して、イタリア語で小説まで書いてしまったジュンパ・ラヒリは憧れである。そのイタリア語で書かれた短編集「ローマ物語」(新潮社 2365円)を読了。
移民は家を買ってさえ、そこの住民とは認められず、子供にまで差別される。一方で、ローマで生まれ育った人には、また違う景色が見える。孤独な生活の中、変わっていく街に馴染めない。傍目には成功しているように見えた人すら、街の中ではひとりぼっちだ。
物語の中のローマは壁が崩れ、ガラスが割れ、落書きだらけなのに、それでも作者がこの街に住み続けている理由がわかる。誰かを愛している人が、その人の欠点を語るときのように愛おしげだ。
そしてわたしは、いつかスペイン語と仲良くなることができるのだろうか。



















