俳優・山本學さん89歳「たかだか役者なんですから」の気持ちでやってます
山本學さん(俳優/89歳)
1978年に放送されたドラマ「白い巨塔」(フジテレビ系)をはじめ、昭和、平成の話題作には欠かせない名優の山本學さん。11月公開の映画「星の教室」では夜間中学の生徒という意外な役を演じる。全国の競馬場巡りを成し遂げた話や馬券のとっておきの思い出を聞いた。
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山本さんの競馬場巡りの紀行文が掲載されたのは月刊「優駿」(2018年8月~19年7月)。札幌に始まりラストの函館までJRA10場を歩いた。
なんか周りの人に騙されたみたいな感じで始まった企画でね(笑)。
競馬との最初の関わりは随分昔のことです。ニューヨークに行った時に妹の亭主に競馬場に連れて行かれたんです。「僕は競馬なんかやらないよ」と言うと「俺の友だちと話をするなら、競馬をわからないとダメ、気に入らなくてもやりなさい」と半ば強引に。
■間違えて買った3連単が60万円。1年間遊べました
買い方を教えてもらっていないからよくわからなくて複勝を50ドル買いました。彼が「何を買ったの?」と言うから馬券を見せましたよ。そしたら「バカ、馬券はそんなにいっぱい買うもんじゃない。日本人みたいなことするな」と怒ってね。僕は「日本人だからいいじゃないか」と言い返しましたけどね。馬券は当たりませんでした(笑)。
馬券に凝った時期もあります。3連単。ある時、自動券売機で買ってどれかが当たったと思ったから、払い戻しに行きました。すると桁が違っている。60万円になっていた。間違えて買ってたんだね(笑)。その年はその60万円で1年間遊ばせてもらいました。
■武豊騎手とルドルフ。忘れられない話
武豊騎手の忘れられない話もあります。武さんがテレビの取材を受けていた。彼は家を出る時に後ろを振り返って「帰って来れるかな」と思うんだそうです。命がけ、死ぬ覚悟でやっているんですね。あの一言が忘れられないなあ。そんな職業は多くないじゃないですか。それを聞いてからはあまり馬券を買わなくなりましたね。
武さんには一度お会いしたいと思って彼が京都に行った時によく行く店を教えてもらって何度か行ってみました。会えませんでしたけどね。
馬ではトーカイテイオーの父で無敵のシンボリルドルフだね。馬券も取りましたよ。ルドルフはアメリカでも走った(86年、サンタアニタ競馬場のサンルイレイS)。その時、友だちがアメリカにいたので、東京から電話して馬券を買ってもらった。彼が「この馬来るのか」というから「それは保証はできない。俺は買いたいんだ」と言ったのに彼は会社でみんなにルドルフをすすめたらしい。結果は6着。あの時は彼に「おまえのおかげで総スカン食らったよ」って怒られた(笑)。
そんなこんなでやってみたかった全国の競馬場巡りが実現しました。戦前、関係者や団体にお金がなくて潰れる潰れないとか、戦争をどうくぐり抜けたとか競馬場づくりは苦労の歴史です。馬券を発行してはいけないなんてメチャクチャな話もあった。もう少し行数があればオチもつけてもっと面白く書けたと思うんだけどね。
その中からこんな一文を。中山競馬場編ではオケラ街道の話が出てくる。競馬の帰り、近くの駅で喫茶店に入った。その後が學さんらしい。
「店の壁面がシャガールの石版画であふれていた。その夜、シャガールの馬が平成のオケラ街道の空を飛んでいる夢を見た」
「白い巨塔」は面白い作品だったけど、僕には複雑な思いがあってね。田宮二郎さんが演じた財前教授は権力欲むき出しの人ですが、里見教授は真実と闘って地方に飛ばされ、おばあさんの健康診断なんかやる役です。でも、現実はそんなことありえないわけです。でも、当時はみんな真面目にドラマを見てくれた。ある時、埼玉の医学会が記念講演をやるというので僕を呼んでくれた。集まったのは病院長とかドラマを見て医者になったという真面目な先生方。その時に、いいのかなと窮屈な気がしましたね。


















