『ANORA アノーラ』底辺ストリッパーが挑む、コワモテ用心棒&女たちとの壮絶バトル

公開日: 更新日:

前半のロマンスが後半で女の苦難に激変

 愛した男は贅沢を味わわせてくれるボンボン。ところがこのボンボンの出自が悪かった。ロシアの大金持ちの一人息子なのだ。いわばオリガルヒの一員だ。

 当然ながら背後に暴力の影がちらつく。案の定、お坊ちゃまの後見人たちが甘い生活に乗り込んでくる。コワモテの彼らは一種の用心棒だ。ロシアの大親分の指示を受けているため、ボンボンをストリッパーと別れさせなければ自分たちの命が危うい。そこで強引にアノーラを引きはがそうとする。

 だが「はい分かりました」と引き下がるアノーラではない。そこは体を張ったストリッパーのド根性。やっとつかんだ幸せを手放すものかと持ち前の気の強さを発揮し、「クソはあんたよ。くたばれこのゲス野郎!」と怒鳴り散らす。さらに女だてらの大立ち回りを繰り広げる。用心棒の股間を蹴り上げ、突き飛ばし、相手の鼻の骨をへし折るのだ。

 先ほど熱演と書いたが、本作におけるマイキー・マディソンの演技の神髄はベッドシーンだけでなく、豪邸の家具をぶっ壊しながら抵抗を続ける壮絶バトルにある。快楽を分かち合う演技と、屈強な男どもを撃退しようとする演技。どちらもくんずほぐれつの肉弾戦だ。

 彼女がロシアの大男と戦っている間、くだんのお坊ちゃまはどうしているのか。なんと、親が怖くて逃げ出したのだから、情けないバカ男だ。このバカ男を街中で探し出そうとするのが後半の主要テーマである。前半のロマンスが後半で女の苦難に激変するのが本作の醍醐味だ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    梅宮アンナ「10日婚」短期間で"また"深い関係に…「だから騙される」父・辰夫さんが語っていた恋愛癖

  2. 2

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 5

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  1. 6

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  2. 7

    横浜流星「べらぼう」ついに8%台に下落のナゼ…評価は高いのに視聴率が伴わないNHK大河のジレンマ

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  5. 10

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅宮アンナ「10日婚」短期間で"また"深い関係に…「だから騙される」父・辰夫さんが語っていた恋愛癖

  2. 2

    「時代と寝た男」加納典明(19) 神話レベルの女性遍歴、「機関銃の弾のように女性が飛んできて抱きつかれた」

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  4. 4

    山本舞香は“ヤンキー”より“令嬢”がハマる?「波うららかに、めおと日和」《ふかふみコンビ》で人気急上昇

  5. 5

    元横綱白鵬 退職決定で気になる「3つの疑問」…不可解な時期、憎き照ノ富士、親方衆も首を捻る今後

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  2. 7

    中川翔子「Switch2転売購入疑惑」を否定も火に油…過去の海賊版グッズ着用報道、ダブスタ癖もアダに

  3. 8

    横浜流星「べらぼう」ついに8%台に下落のナゼ…評価は高いのに視聴率が伴わないNHK大河のジレンマ

  4. 9

    中日・中田翔がいよいよ崖っぷち…西武から“問題児”佐藤龍世を素行リスク覚悟で獲得の波紋

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希「今季構想外」特別待遇剥奪でアリゾナ送還へ…かばい続けてきたロバーツ監督まで首捻る