岐阜県飛騨市は「薬草の宝庫」 長期滞在が楽しい

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 岐阜県の最北端に位置する飛騨市は、新海誠監督の長編アニメーション「君の名は。」でモデルとなったスポットが点在し、聖地巡礼のファンが訪れることでも知られている。実際に訪れてみると、作品では描き切れない魅力に満ちていた。

 ◇  ◇  ◇

 平成の大合併で誕生した飛騨市は、歴史情緒あふれる街並みの旧古川町、スーパーカミオカンデで知られる旧神岡町など異なる顔を持った4町村が1つになっている。文化圏としては岐阜県というよりも隣接する富山県の影響が大きく、休日には車で1時間半ほどの富山市に出かけて映画やショッピングを楽しむ人が多いという。

 同市が観光客を迎え入れるために本腰を入れて取り組んでいるのが、新型コロナウイルスの対策だ。市役所の駐車場では旅行客も無料で新型コロナの簡易検査を受けられるほか、宿泊施設にも検査キットを配備し、合宿や団体旅行向けに事前の抗原検査にかかる費用の一部を負担する制度まで設けている(いずれも期間限定。要確認)。コロナ禍の生活の変化に疲れた旅行者の不安を取り除く対策が打たれているのだ。

 ぐるりと囲む山々の自然も、訪れた人を和ませる。天候に恵まれれば、標高1058メートルの安峰山の頂上から、すっぽりと街を覆う雲海を眺めることもできるだろう。

クズの花は二日酔いの妙薬

 実はここ、全国有数の薬草の宝庫でもあり、薬草研究の第一人者で崇城大学薬学部で教授を務めた故・村上光太郎氏は、245種類の薬草を見つけている。それらをおいしく食べられるのが、「蕪水亭OHAKO」(℡0577・73・0048)だ。

「健康にいいけど苦いというイメージがある薬草も、工夫次第でおいしくなります」(店長の北平知亜季さん)。ランチプレート(980円)のハンバーグは血液の循環を良くするとされるメナモミ入りで、軽やかなトマトソースとの相性もグッド。8種の薬草が入ったスープもおいしい。

 歩いてすぐの「ひだ森のめぐみ」(℡0577・73・3400)では「クズの花玉づくり」(15分1000円)や「入浴剤作り」(同500円)など、さまざまな薬草体験ができる。根っこが漢方の葛根湯として使われるクズは、花の部分が肝臓に効くとされ、粉末にして蜂蜜で固めた「花玉」は二日酔いの妙薬となるそうだ。

町屋の一棟貸しでワーケーション

 さらなる薬草体験は郊外の「朝霧の森」で。ゆっくり歩いても1時間ほどのハイキングコースがあり、11月の第1週ぐらいまでは生い茂った桂の木の甘い香りをかぐことができるかもしれない。6~10月はガイドツアーも実施している。

 1000匹ほどのコイが泳ぐ瀬戸川に沿って白壁の土蔵が軒を連ねる古川地区では、都会とは違うゆったりとした時間を体感できる。せっかく訪れるのであれば、そのリズムに身を任せたい。駆け足でめぐるのはもったいないだろう。

 長期滞在の希望者には、町家の一棟貸し「IORI STAY」(https://iori-stay.com/ja/)がオススメだ。飛騨地区全体で10棟の宿があり、2連泊以上だと料金が25%オフになる「連泊キャンペーン」のほか、5連泊以上で40%オフの「ワーケーションプラン」も用意されている。この日は築80年の町家の蔵を改修した「IORI KAWANAKA」(1泊朝食付き、2人3万8000円~)に宿泊。徒歩圏内にはプライベートサウナを備えたワークスペース「TRACE」(https://trace-hida.com/)もあって、利用者は「IORI STAY」に特別価格で泊まることもできる。

 朝は学校に向かう子供たちの声を聞きながらお茶をすすり、日中は仕事に集中、夕方になれば八百屋や総菜屋に足を運んで晩飯について思案する。たまには店の暖簾をくぐり、タレに漬け込んだ鶏肉を野菜と炒めた「鶏ちゃん」や漬物を炒めて卵でとじた「漬物ステーキ」などの郷土料理で一献傾けるのもいい。暮らすように旅をしたい人こそ訪れたい場所。世界遺産の白川郷や高山市、下呂温泉を周遊観光する拠点としても最適だ。

日本酒の好みに応じて的確なアドバイス

 古川地区には「白真弓」の蒲酒造場と「蓬莱」の渡辺酒造店の2つの酒蔵があり、それぞれの家庭でひいきの銘柄が決まっているそうだ。人気はだいたい五分五分で、どの飲食店に行っても、日本酒はこの2つしかない。地産地消が徹底されている。

 この2つの蔵の全銘柄を揃えているのが後藤酒店(℡0577・73・2657)だ。「飛騨は味噌などを使った深い味の料理が多く、それに負けない辛口の酒が生まれた」と説明するのは、8代目の後藤亜都子さん。好みの味やその日の料理に合わせて的確なアドバイスをくれるので頼りになる。

 おいしいコーヒーを飲みたい時は、旧国鉄神岡線の駅舎を利用した「自家焙煎珈琲あすなろ」(℡0578・82・4008)へ。マーガレットの花酵母を使ったパンも地元の人たちに人気だ。

(取材・文=二口隆光/日刊ゲンダイ)

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