ロシア語通訳としての顔…クリミア半島併合の時はテレビ局詰めに
ウクライナの伝統楽器バンドゥーラ奏者のカテリーナさんにはロシア語通訳としての顔がある。ウクライナでは学校教育でロシア語も勉強するのでお手のモノなのだ。
カテリーナさんは日本人男性と結婚し、日常生活は流暢な日本語、本稿の取材はすべて日本語で行われた。カテリーナさんは日本語を読み、話すだけでなく、書くこともできる。なので、ロシア語通訳でも重宝がられている。
ロシア語の通訳の仕事はひょんなことから始まった。
「都内のロシア雑貨店に私のCDを置かせてもらっていたのですが、ある日、『ロシア語を習いたいお客さんがいるのでカテリーナさんにお願いできない?』と連絡をもらいました。未経験でしたが、自分なりに調べて教材を準備しプライベートレッスンを始めました」
すると、まもなく舞い込んだのが通訳の依頼だった。ロシアの高校野球チームと日本の球児たちとの交流試合だった。
「野球をまったく知らないので、慌てましたけど(笑)、楽しかったですよ。あの時は私が『君が代』とロシアの国歌の両方を歌ってそれぞれ通訳しました」
そしてロシアによるクリミア半島併合で騒然とした2014年、急きょ、テレビ局から通訳を依頼されたという。
「私のことを調べたんでしょうね、通訳会社から連絡があって、『ロシア語わかるでしょ? ニュースの通訳が必要だからすぐにテレビ朝日へ行って』と突然……」
それから本格的にロシアのニュースの通訳の仕事が増えていった。実は昨年のウクライナへのロシアの侵攻勃発時も胸が裂ける思いを抱えながら通訳をこなしていたという。
「戦争のニュースを見て音楽をやる気がなくなっちゃって……。その間は粛々とテレビ局で通訳の仕事をしていました。テレ朝、フジテレビ、NHKを行ったり来たり、夜中も早朝も関係なく呼ばれたので、旦那さんとケンカになることもありましたね」と振り返る。
結果的に通訳の仕事がきっかけとなって、実はウクライナ人の音楽家であることがマスコミに知られるようになり、自身への取材も急増した。現在、チャリティーコンサートでスケジュールがいっぱいというカテリーナさんいわく、「今は音楽活動で忙しいですが、テレビ局から『またお願いしたい』と連絡をいただいてうれしかったです。通訳の仕事も頑張ってきてよかったなって思っています」とニッコリ。
カテリーナさんが主催する「ウクライナ料理と音楽の夕べ」から今回紹介する料理は「ソバの実ハンバーグ」。人気のウクライナ家庭料理だ。