「静かなる決闘」感染症で人生狂わされた青年医師心の叫び

公開日: 更新日:

 恭二には美佐緒(三條美紀)という美しい婚約者がいるが、彼は梅毒を患っているため結婚に踏み切れない。戦地を転々とさせられたため根治できなかったのだ。美佐緒はそうした事情を知らず、医院に通っては恭二のために手料理をつくる。

 そんなある日、恭二は自分に梅毒をうつした中田と再会。中田は暴力沙汰を起こして警察に捕まる無頼漢で、妻は妊娠しているという。恭二は梅毒が胎児に及ぼす影響を心配し、妻を連れて診察を受けに来るよう勧めるのだった……。

 医薬品も時間の余裕もない最前線で働いていたため感染症を治せなかったのは一種の「医療崩壊」。医師が患者のために命がけで闘う姿は現在の医療現場を思わせる。

 恭二は中田によって梅毒患者の境遇に追いやられたにもかかわらず、恨み言を一切口にしない。それどころか医師の倫理観から彼と妻を救おうとする。だが中田は「貴様のせいで俺の家庭はめちゃめちゃだ」と逆恨みし、酒に酔って院内で暴れまわる。

 見どころはその中田を峰岸が平手打ちする場面。恭二の苦しみを知った彼女は真面目に看護師を目指し、若き医師を尊敬するようになっていた。だから梅毒をうつした中田を許せない。この場面を見るたびに、こんなろくでなし野郎のために青年医師は人生を狂わされてしまったのかとやり場のない怒りがこみ上げてくる。千石規子の演技はすごいの一語。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  3. 3

    「時代と寝た男」加納典明(17)病室のTVで見た山口百恵に衝撃を受け、4年間の移住生活にピリオド

  4. 4

    中居正広氏に降りかかる「自己破産」の危機…フジテレビから数十億円規模損害賠償の“標的”に?

  5. 5

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  1. 6

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  2. 7

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  3. 8

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  4. 9

    「こっちのけんと」の両親が「深イイ話」出演でも菅田将暉の親であることを明かさなかった深〜いワケ

  5. 10

    長嶋一茂が父・茂雄さんの訃報を真っ先に伝えた“芸能界の恩人”…ブレークを見抜いた明石家さんまの慧眼

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも