「静かなる決闘」感染症で人生狂わされた青年医師心の叫び

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 恭二には美佐緒(三條美紀)という美しい婚約者がいるが、彼は梅毒を患っているため結婚に踏み切れない。戦地を転々とさせられたため根治できなかったのだ。美佐緒はそうした事情を知らず、医院に通っては恭二のために手料理をつくる。

 そんなある日、恭二は自分に梅毒をうつした中田と再会。中田は暴力沙汰を起こして警察に捕まる無頼漢で、妻は妊娠しているという。恭二は梅毒が胎児に及ぼす影響を心配し、妻を連れて診察を受けに来るよう勧めるのだった……。

 医薬品も時間の余裕もない最前線で働いていたため感染症を治せなかったのは一種の「医療崩壊」。医師が患者のために命がけで闘う姿は現在の医療現場を思わせる。

 恭二は中田によって梅毒患者の境遇に追いやられたにもかかわらず、恨み言を一切口にしない。それどころか医師の倫理観から彼と妻を救おうとする。だが中田は「貴様のせいで俺の家庭はめちゃめちゃだ」と逆恨みし、酒に酔って院内で暴れまわる。

 見どころはその中田を峰岸が平手打ちする場面。恭二の苦しみを知った彼女は真面目に看護師を目指し、若き医師を尊敬するようになっていた。だから梅毒をうつした中田を許せない。この場面を見るたびに、こんなろくでなし野郎のために青年医師は人生を狂わされてしまったのかとやり場のない怒りがこみ上げてくる。千石規子の演技はすごいの一語。

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