映画「トゥルーノース」在日4世・清水ハン栄治監督が描く極限状態の心理

公開日: 更新日:

 初メガホンとなる清水ハン栄治監督は在日4世で、これまで人権問題をテーマにした伝記漫画シリーズの出版などを手掛けてきたという。製作コストを抑えるため、3Dアニメーションはインドネシアの、映画未経験のアニメーターたちが手掛けたが、ハリウッド映画のような流麗なアニメーションとは違った質感が逆に新鮮だと評価する声もある。

「実際、収容所の不気味な空気感をうまく表現できています。とはいえ拉致問題を抱える日本人にとっては、北の人権意識の低さは周知のことで、それだけでは驚くに値しません。この映画が真に優れているのは、そんな最悪の環境下でも、トウモロコシ数粒を賭けてたわいもない遊びをしたり、見張りの目を盗んでささやかな葬式をしたりなど、人間性を失わぬよう努力する人々の姿を描いたこと。清水監督は製作を担当した『happy―しあわせを探すあなたへ』(12年)で、日本を含む先進国と途上国の最貧民の幸福度が同等だと科学的に突き付け衝撃を与えましたが、そうした幸福心理学の専門家としての視点が本作にも奥行きの深さを与えており、極限状況での生きざまについて考えさせられます」(前出の前田氏)

 強制収容所の現実を暴いただけでなく、そこで生きる北朝鮮国民の内面にまで踏み込む問題作といえそうだ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  3. 3

    「時代と寝た男」加納典明(17)病室のTVで見た山口百恵に衝撃を受け、4年間の移住生活にピリオド

  4. 4

    中居正広氏に降りかかる「自己破産」の危機…フジテレビから数十億円規模損害賠償の“標的”に?

  5. 5

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  1. 6

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  2. 7

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  3. 8

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  4. 9

    「こっちのけんと」の両親が「深イイ話」出演でも菅田将暉の親であることを明かさなかった深〜いワケ

  5. 10

    長嶋一茂が父・茂雄さんの訃報を真っ先に伝えた“芸能界の恩人”…ブレークを見抜いた明石家さんまの慧眼

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも