巻頭の「根岸競馬場一等馬見所」から圧巻──全国各地の遺構をめぐる一冊 「異世界図鑑」前畑洋平著

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「異世界図鑑」前畑洋平著

 幼い頃から廃工場などでの秘密基地ごっこが好きだった著者は、長じて全国各地の「遺構という異世界」を訪ね歩くようになった。さらにNPO法人を立ち上げ、産業遺産の保存や活用、広報にかかわる活動にも携わる。

 そんな著者が、原点である「異世界感=廃虚的な景観」に浸れる、全国各地のおすすめ遺構を案内してくれる写真集。

 巻頭を飾る「根岸競馬場一等馬見所」は、著者が廃虚近代建築の東のトップに挙げるイチ推し。

 根岸競馬場は、横浜の外国人居留地住人の要望を受けて建設された日本初の競馬場。太平洋戦争中に海軍省に接収され、戦後、競馬場として復活することなく、76年の歴史に幕を下ろしている。

 その一等馬見所は、横浜の街が見渡せる高台に立つ。印象的な3本の塔屋は、馬の顔を模しているそうで、言われてみると確かにそう見える。

 普段は非公開の建物の内部まで、その隅々を紹介。今は静かに眠る建物のあちらこちらから、当時の人々の歓声や熱狂が聞こえてくるようだ。

 以降、西のトップという摩耶観光ホテル(兵庫県)や森の中で朽ち果てようとしている沼東小学校(北海道)の円形校舎など、人々の暮らしを彩った遺構に始まり、新潟県の山中深くに眠るレンガ造りの神殿・持倉鉱山のような産業遺構、明治期に大阪湾防衛のために旧陸軍によって築かれた友ケ島砲台(和歌山県)のような巨大遺構、1985年に廃線となり今は竹やぶの中に線路の跡などが残る国鉄倉吉線(鳥取県)のように森にのみ込まれた遺構まで、45スポットを収録。

 中には、すでに解体され、この世から消えてしまった遺構もある。過去という異世界への扉を開いてくれる水先案内人的一冊だ。 (エクスナレッジ 2640円)

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