著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。

(33)三浦海岸でのんびり散歩酒

公開日: 更新日:

 1日がかりで遠出をして飲むことがある。いや、気持ちのいいところまで出かけて行って、結果的にそこで飲むといったほうが正確か。定期的に行くのは江ノ島だ。とはいえ、江ノ島へ渡ることはまずない。片瀬江ノ島駅前のバーで飲み始め、江ノ電で鎌倉へ出て小料理屋さんで仕上げて帰るのである。

 もう少し遠くまで行きたいときは、気が向けば1泊するくらいの気持ちで出かける。江ノ島よりもっと西となると、真鶴あたりもいい。岬の森の中を歩き、港の近くでうまい魚を喰い、帰りたくなくなれば釣り宿か、湯河原の温泉宿という手もある。

 以前、三浦海岸まで出かけたときも、海岸を歩き、気が向いたら三崎口からバスに乗って港へ行き、泊るところを探せばいいと、ぼんやり考えていた。

 実際には、三浦海岸の砂浜を眺めながらの散策がことのほか楽しく、長い時間を浜で過ごすことになった。浜から駅へ戻るとき、古い民家の並ぶ細道をぶらぶら気の向くままに歩いていると、漁師町特有の匂いというか、ちょっと枯れた空気が感じられた。それは昔、紀州の母方の生家へ旅をしたときに見た、石畳の細道を思い起こさせた。満潮時には港から水が上がってくるのか、側溝の中を小さなカニが走っていた。

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