地域の防災拠点となるパチンコホールの知られざる機能
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大規模災害への備えや見直しは必須
あの日、飲食店もコンビニもシャッターを下ろした震災直後の街で、最初に明かりが灯ったのはパチンコホールだった--。そんな証言は少なくない。単なる遊技場というだけでなく、地域の防災拠点にもなるパチンコホールの機能に注目が集まっている。
国会では、災害対応の司令塔となる防災庁の設置関係法案が衆議院を通過、5月22日に参議院の本会議で審議入りした。今国会で成立する見通しで、今秋11月にも防災庁が発足する。
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日本は地震や台風、火山の噴火などの自然災害に頻繁に見舞われる国だ。東日本大震災(2011年)以降も、熊本地震(2016年)や西日本豪雨(2018年)、令和元年房総半島台風(2019年)、熊本豪雨(2020年)など、近年は大規模地震だけでなく台風や豪雨災害も毎年のように発生し、災害が激甚化している。
今年4月の三陸沖地震や、能登半島地震(2025年)は記憶に新しいが、今後30年以内に南海トラフ地震や首都直下型地震も高い確率で起きるリスクが指摘されている。大規模災害への備えや見直しは必須だ。
大規模災害でまず必要とされるのが避難所だが、交通インフラが寸断されれば、食料や救援物資が被災地に届かないという事態も起こり得る。実際に、能登半島地震では道路網の寸断が避難生活に大きな影響をもたらした。
そんな中、地域の防災拠点として、あらためて注目されているのがパチンコホールだ。パチンコやパチスロを遊技しない人にとっては、なじみが薄い施設で、ピンと来ないかもしれないが、実はパチンコホールは災害時の避難場所に最適な条件をいくつも備えている。
パチンコホールが防災拠点に適している理由とは
まず、地方のパチンコホールは敷地が広く、大きな駐車場を備えていること。立体駐車場であれば、津波や水害時の避難先にも適している。
重量30~70kgの遊技台を大量に設置しているため、建物自体も広く頑強だ。構造自体は体育館に似ているとも言える。ダクトや窓など一部が破損することはあっても、建物全体が使えなくなることは少ない。
東日本大震災の際も、津波で指定避難所が壊滅する中で、パチンコ店に避難して無事だったケースが多くあったという。
電気が通っていれば、充電環境は整っているし、非常用の発電設備を備えているホールもある。災害時の情報収集は重要で、避難生活ではスマホの充電も死活問題だ。
また、パチンコホールには景品として飲料水やカップ麺、菓子類から防災グッズ、子ども向け玩具にいたるまで、食料や日用品が常にストックされている。災害時にはこれらを被災者向けの支援物資に転用できるという利点もある。
実際にホール側も、地域の防災拠点としての取り組みを進めている。
避難生活のストレスを癒す息抜きの場として機能する
大手チェーン「マルハン」は、災害時に全国の店舗の状況を一律で確認できるツールを導入。2024年1月1日に発生した能登半島地震でも、いち早く駐車場を開放し、被災者支援に乗り出した。
「地震発生当時、被災エリアの七尾店は営業中でしたが、お客様を避難誘導した後に店内の安全確認が取れ次第、駐車場を開放しました。日頃から避難誘導係、場内アナウンス係、初期消火係などホールスタッフの役割分担が決まっていて、本部と連携しながら機動的に動けるオペレーションが確立されています。まずは駐車場で車中泊される方や近隣住民向けに、景品の飲料や食料を無料配布し、地域ごとの倉庫から追加の救援物資を送りました。停電はしなかったのですが、断水していたため、プライバシーを確保できる仮設トイレも設置し、SNSなどで告知したところ、多くの方が一時避難にいらっしゃった。こうした知見の積み重ねが災害時に活きています」(北日本カンパニー総務法務部・総務法務課の細野力哉課長)
娯楽施設であるパチンコホールが災害直後に営業再開することには、外部からネガティブな反応もあるというが、地域住民にとっては拠り所になっている現実がある。
それを能登半島地震で実感したという七尾店店長は、こんな言葉を書き留めていたという。
<どんな場面でも人には娯楽、癒しの場、逃げ場が必要
その場に集うことで、顔をあわせる、コミュニケーションが生まれる場所になる
そのニーズに応えていくのが我々の使命そのもの
ひとりでも、そういう場を必要とする人がいるなら店を開けてお迎えする>
被災者には強いストレスがかかる。そんな時に、いつものホールで息抜きができれば、ひととき日常生活に戻ることができるという効果もある。
地域と共生しインフラとしての役割を果たす
同じく全国チェーンの「ダイナム」も災害時の備えに力を入れている。企業理念に社会貢献を掲げるダイナムには、災害対応や復興、ボランティア支援を専門とする部署があり、普段から行政と情報を共有して連携を取っているという。
「全国387店舗のうち287店舗が地方自治体との防災協定を締結し、初期避難の対応として、50人分の毛布とカセットコンロ、ガスボンベを常備しています。さらに、全国各地の物流倉庫に災害用トイレなどの物資を備蓄しているほか、店舗の社用車にはカーインバーターを搭載するなど、災害時にホールが地域のインフラとして機能するために何ができるかを常に考えてきました。自治体や近隣企業と協力して、駐車場で防災イベントを行うこともあります。警察署や消防署の協力も得て、消防車やはしご車を出してもらい、親子で楽しめるイベントです。地域に親しまれるホールであれば、いざという時に頼りにしてもらえると考えています」(ダイナム経営企画部・広報担当 白瀧大介マネジャー)
近年、ホール企業や遊技業組合が防災に備えるための協定を自治体と締結する取り組みが進んでいるが、パチンコホールが防災拠点であることは一般にあまり知られていない。防災イベントの開催は、地域住民に周知する絶好の機会と言えるだろう。
旅先で被災した場合もパチンコホールが頼りになる
一方で、旅先や出張先など、土地勘の乏しい場所で被災するケースも考えられる。地域住民なら、避難所の小学校や公民館がどこにあるか日頃から把握しているだろうが、旅行者の場合、どこへ行っていいのか分からない。そんな時にも頼りになるのがパチンコホールだ。
多くの場合、パチンコホールは幹線道路や住宅街にあり、大きな看板は遠くからでも目立つ。
災害時に地域の防災拠点になる準備をしているパチンコホールの情報をまとめた「ぱちんこ防災拠点ネットワーク」の事務局によれば、全国で1587店が登録加盟(2026年5月26日時点)、開放駐車場台数は26万439台に上る。
スマホで「ぱちんこ防災ネットワーク」のHPを開けば、位置情報から最寄りの加盟店の場所が地図上に表示されるから、いざという時のために覚えておくといい。
災害時に困ったら、パチンコホールに行けば助けてもらえるということを知っているだけでも、大きな安心になるはずだ。

















