著者のコラム一覧
細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

山口洋子にも「実家の姑さんに可愛がられる嫁にならないといけない」という呪縛が

公開日: 更新日:

 1983年、日本中に空前の大ブームを巻き起こしたドラマといえば、「おしん」(NHK)である。主演の田中裕子演じるおしんが、関東大震災で自宅と工場を瞬時に失い、佐賀にある夫の実家に身を寄せるくだりがある。これをマニアは「地獄の佐賀編」と呼ぶらしい。

 姑から壮絶な“嫁いびり”に遭ったおしんは、出産間際になっても農作業を課せられ、揚げ句に、嫁いでいた義妹が出産を控えて実家に戻ってきたことから「同じ家に2人も身重の女がいては縁起が悪い」と言う姑の言い付けに従い、母屋から追い出されてしまう。物置
に独り隔離されたおしんは、ろくに食事も与えられず、産気付いても誰にも気付かれず、自力で女児を産むのだが、結局死産してしまう。

 私観だが前半の「小林綾子編」がマイルドに感じるくらいで、正真正銘の地獄である。よく、こんな壮絶な作品を「朝の連ドラ」で流せたものだとつくづく思うと同時に、田中裕子の悲哀にみちた演技力と、橋田寿賀子の筆力にうなるほかない。

 とはいえ、一般の視聴者にとってそんなことはどうでもよくて、姑役の高森和子は街を歩けば罵声を浴びせられ、所属事務所には連日「おしんをいじめるな」という抗議の投稿や、嫌がらせが相次いだというし、当時の佐賀県の井本副知事は「これでは佐賀のイメージダウンになる」とNHK佐賀放送局を通して善処を求めたのは有名な話だ。行政レベルで懸案事項に上っていたことになる。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  2. 2

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  3. 3

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 4

    「べらぼう」大河歴代ワースト2位ほぼ確定も…蔦重演じ切った横浜流星には“その後”というジンクスあり

  5. 5

    100均のブロッコリーキーチャームが完売 「ラウール売れ」の愛らしさと審美眼

  1. 6

    「台湾有事」発言から1カ月、中国軍機が空自機にレーダー照射…高市首相の“場当たり”に外交・防衛官僚が苦悶

  2. 7

    高市首相の台湾有事発言は意図的だった? 元経産官僚が1年以上前に指摘「恐ろしい予言」がSNSで話題

  3. 8

    AKB48が紅白で復活!“神7”不動人気の裏で気になる「まゆゆ」の行方…体調は回復したのか?

  4. 9

    大谷翔平も目を丸くした超豪華キャンプ施設の全貌…村上、岡本、今井にブルージェイズ入りのススメ

  5. 10

    高市政権の「極右化」止まらず…維新が参政党に急接近、さらなる右旋回の“ブースト役”に