戦争の真実を振り返る戦後80年本特集

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「1945 最後の秘密」三浦英之著

 戦争を体験した世代の多くがこの世を去り、歴史の語り手が年々減っている。しかし、戦後80年を迎えた今こそ、かつて周囲への影響を考えて口にできなかった真実を明らかにできる最後のタイミングかもしれない。今回はそんな戦後80年本を4冊ご紹介する。



「1945 最後の秘密」三浦英之著

 戦後80年を経ても、いまだ多くの人に知られていない戦時下の事実がある。本書は、そんな出来事をひとつひとつ掘り起こした渾身のノンフィクションだ。取り上げているのは、満州国政府総務庁時代に体験した極秘計画をつづった手紙を亡くなる2カ月前に筆者に届けた先川祐次、元宝塚で女優としての絶頂期に広島で被爆した園井恵子、原爆投下の候補地になっていることを知り敗戦4日前に全市民の原爆疎開をさせた新潟県の畠田昌福知事ら。

 ほかにもミッドウェー島への攻撃で不沈空母と呼ばれた巨艦が沈むのを目の当たりにした数少ない生存兵が口封じのために監禁状態に置かれたことや、崩壊の恐れのある戦時中に掘られた地下壕が全国の市街地に今なお487カ所もあることなども記されており、隠されてきた事実の多さに驚愕させられる。 (集英社 2200円)


「徴兵体験百人百話」阪野吉平著

「徴兵体験百人百話」阪野吉平著

 山形県の置賜地方において徴兵された110人に聞き書きをした徴兵体験記。地元タウン誌に写真日記を連載していたことを契機に、住人の徴兵体験の聞き取りを始めた著者。積極的に聞いて回らなければ残ることのなかった市井の人々の声が収録されている。

 同じ地域、同じ時代に徴兵対象になった人たちでありながら、110人の体験は多岐にわたる。銃殺直前に命拾いをした人、麻酔薬なしで足を切断する手術を受けた人、ソ連の捕虜になった人、食糧調達のためひたすらイモ畑で働いた人、広島の爆心地から2キロの位置にいた人、軍艦が4度も沈没したのに生き残った人などが登場。

 上官にビンタでしごかれた経験や、免税券を持っていくと1回20円で慰安婦と関係を持てたことなども語られており、証言が生々しい。 (17出版 1650円)

「無名兵士の戦場スケッチブック」砂本三郎著 渡辺考解説

「無名兵士の戦場スケッチブック」砂本三郎著 渡辺考解説

 著者は56歳のときに脳出血で倒れ、若き日に体験した戦争を描き始めた。鎮魂の思いを込めて描いた水彩画は計130枚。4年にわたる従軍の記憶の中には、捕虜への虐待や、味方を守って亡くなった戦友、無謀な作戦の末の大量死、積み重なる死体の埋葬、食糧難のため人減らしで罪を着せられ殺される場面などがあった。「君の為だよ/軍伐政治に/だまされ逝」などの文言と共に憤りを込めたカルタも収録されている。

 著者は1997年に亡くなり、絵を収めたファイルが友人間で回覧されて終わるはずだったが、女優の秋吉久美子が偶然絵を見て衝撃を受け、編集者につなげて今年の出版につながったのだという。元NHKディレクターで戦争関連の映像作品や著書もある渡辺考氏が、著者の足跡や事実関係を検証し解説している。 (筑摩書房 3080円)


「80年越しの帰還兵」浜田哲二、浜田律子著

「80年越しの帰還兵」浜田哲二、浜田律子著

 激戦地にいまだ埋もれたまま眠っている遺骨が多数ある。本書は、今世紀初頭から沖縄で遺骨収集活動を行ってきた元朝日新聞カメラマンと元読売新聞記者の夫婦による遺骨収集を巡る記録だ。きっかけとなったのは、遺骨収集の達人・国吉勇氏との出会い。国吉氏の活動を追うなかで、サンゴと遺骨の区別すら難しかった状態から、遺骨収集のみならず遺留品を基に身元を特定し遺族へ遺骨を届ける活動まで行うようになった。

 ボランティアへの支給金目当ての詐欺に名前が使われたり、資料館設立をかたる詐欺師の出現に悩まされたりなどの困難を経験しつつも、地道な活動を続けていく。遺留品のカメラが殉職記者のものではと該当者を捜すも一筋縄ではいかない様子も語られる。長い歳月に押し流されつつも挑み続ける姿が胸を打つ。 (新潮社 1760円)


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