これで演じ納め…一世一代の「霊験亀山鉾」で示す片岡仁左衛門の美学

公開日: 更新日:

 歌舞伎座は2月も3部制。どれかひとつなら、第3部「霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)」だろう。片岡仁左衛門の一世一代、つまり、この演目は演じ納めとなる。

 鶴屋南北の作品だが、上演頻度は高くない。戦後は今回が5回目で、そのうち4回が仁左衛門主演だった。その当たり役のひとつが、これで最後となるのは残念だが、みっともないものは見せたくないという、仁左衛門なりの美学なのだから、仕方ない。

 仁左衛門は冷酷な悪人と、その悪人によく似たという設定の小悪人という、種類の異なる「悪」を演じ分けている。小悪人で見せる、愛嬌というか軽妙さも、この役者の持ち味だが、やはり天下一品なのが、どこまでも冷酷で憎らしい、大悪人の役だ。

 それは「悪の魅力」というものでもない。この芝居での主人公は事情があって悪に手を染めるタイプではなく、最初から徹底した悪人なので、観客としては、感情移入できる対象ではないし、まして憧れもしない。そういうタイプの「悪」ではない。いいところのまったくないキャラクターなのだ。その点が、この芝居があまり上演されない理由かもしれない。

 そんな悪人なのに、仁左衛門だと、その「悪」を「美」にしてしまう。今後、この役を演じてさまになる役者がいるだろうか。その意味でも、今回見ておいたほうがいい。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    世良公則氏やラサール石井氏らが“古希目前”で参院選出馬のナゼ…カネと名誉よりも大きな「ある理由」

  2. 2

    新横綱・大の里の筆頭対抗馬は“あの力士”…過去戦績は6勝2敗、幕内の土俵で唯一勝ち越し

  3. 3

    年収1億円の大人気コスプレーヤーえなこが“9年間自分を支えてくれた存在”をたった4文字で表現

  4. 4

    浜田省吾の父親が「生き地獄」の広島に向ったA.A.B.から80年

  5. 5

    山尾志桜里氏は出馬会見翌日に公認取り消し…今井絵理子、生稲晃子…“芸能界出身”女性政治家の醜聞と凄まじい嫌われぶり

  1. 6

    「徹子の部屋」「オールナイトニッポン」に出演…三笠宮家の彬子女王が皇室史を変えたワケ

  2. 7

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希 球団内で「不純物認定」は時間の問題?

  4. 9

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償

  5. 10

    フジ親会社・金光修前社長の呆れた二枚舌…会長職辞退も「有酬アドバイザー」就任の不可解