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「ぼくたち、親になる」稲田豊史著

「イクメン」が流行語になったのはもう15年も前。いまオトコたちは?

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「ぼくたち、親になる」稲田豊史著

 団塊世代は戦後世代の中でも人口の多かったことで知られる。その子どもにあたる団塊ジュニア世代も前後に比べると人口は多かった。ところが団塊ジュニア世代は実は子どもの数が少ない。就職氷河期に当たったためというのが一般的な説明だが、世代全体が非婚化・晩婚化の潮流にあったことも一因だろう。

 本書はまさに団塊ジュニア世代のライターによる「親になること」の是非論。「子持ち」と「子なし」の間で同じ世代でも分断があるという著者の観察をもとに、同世代の40代を中心にさまざまな意見を持つオトコたちにインタビューする。

「子育てはハンデだ」「妻への愛情はゼロになった」「キャリアの天井が見えたから」子どもを持った、など全体として否定的というか、親になる・なったことへのネガティブな動機や気持ちが目立つ。中には子どもを望んだのにできなくて3年もうつ病に苦しんだという男性も出てくるが、その談話の中で「(知人は)子供がいることで作家活動が大きく制限されたそうです。当然ですよね」という。子どもを望んでいても、いると仕事の支障になる。そんな発想の根っこにあるのは何だろうか。

(太田出版 1980円)

「入門 男らしさの歴史」弓削尚子著

「入門 男らしさの歴史」弓削尚子著

 フランス革命前のルイ王朝では、君主が真っ赤なフリルのついた上着と大きなリボンで飾ったハイヒールを履いていた。現代の男がこんな格好をしていたらトランスジェンダーの芸人に間違われかねないことを思うと「男らしさ」は実は時代や環境によって簡単に変化するものだということが分かる。こんな歴史から始まる本書は主に西洋史の中で規定された「男」の概念の変遷をたどる早大教授の著作。

「男」という概念は単に生物学的な性差だけでなく、歴史の中の政治的な動きともかかわる。たとえば作曲家のシューマン、哲学者ニーチェ、社会学者ウェーバー、ベンツ社の創始者ダイムラー。彼らはみな19世紀前半にドイツの大学で盛んになったナショナリズム運動の学生組織のメンバーという共通点がある。こうした組織を通してエリートの男たちが互いに切磋琢磨する姿は各国に共通していた。おそらく日本の旧制高校などもこの流れをくむものだったのではないか。かつてボーボワールは「女に生まれるのではない。女になるのだ」と言ったが、それは男にもそっくり当てはまるということだ。

(筑摩書房 1034円)

「男性解放批評序説」杉田俊介著

「男性解放批評序説」杉田俊介著

「非モテの品格」や「男がつらい!」などの著作のある筆者。文芸評論と男性問題批評を並行して行う「男性解放批評」を目指すと宣言するのが本書だ。

「イクメン」ブームが盛り上がった2010年前後は、著者によれば「男性学ルネッサンス」だったという。フェミニズムの議論が盛り上がった後の「男性の自己省察」(上野千鶴子)として男性学への関心が高まった。こうした動きの影響を強く受けた成果のように、著者は村上春樹や松浦理英子や魯迅を読む。また村上作品を原作にした映画をも論じる。村上の「女のいない男たち」を原作とした濱口竜介監督映画「ドライブ・マイ・カー」と原作を詳しく比較し、ジェンダー論やフェミニズムや精神医学などの概念を使って読み解いていく。

 どの論考も解読しきったという満足感を感じさせず、解決できないことの息苦しさを漂わせているところは、単に著者の個性ではなく時代のなせるわざだろう。男に生まれたこと自体が加害であるかのように見なされ、男ばかりの集団はホモソーシャルと批判される。そういう感じ方を反動的と受け止める感性も含めて、男性が置かれた現在地を言葉にしようとする点に、本書の「序説」としての意味がある。

(集英社 1980円)

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