泉麻人さん 近未来ならぬ「近過去」を掘り下げて調べることが死ぬまでの趣味
自分のルーツを探る旅をしたい
これから始めたいこととしては若い頃に行った場所を訪ね直したい。学生時代にサークルの合宿で葉山によく行ったんです。御用邸の裏の方でした。再訪したのは10年くらい前でしたが、昔と変わっていない風景が案外残っていましてね。それと、20歳くらいの学生の当時は興味がなかった昭和の初めくらいに建てられた洋館を見つけて楽しんだり。建築の知識なんかが加わると、昔は視野になかったものが見えてくる。子供の頃に読んだ本を大人になって読み直した時に新たな発見をするのと同じですね。
だから、スマホはマップをはじめとして、近過去調べに役立っています。万歩計アプリも入れて歩いていますから、トレーニングの記録にもなっている。カロリー消費を目的に街歩きするのもちょっと味気ないですが(笑)。
他にやりたいことは自分のルーツを探る旅をしたい。亡くなった父方の祖父母は台湾にいたんです。だから、父親たち兄弟は台湾生まれ。花蓮という南東部の町の砂糖会社を任されていました。塩水港という戦前には有名な会社で、その後、吸収されてなくなったのですが、祖父は工場長らしく、工場の敷地の一角に家があって住んでいたみたいですね。
台湾には行ったことがないので、親父たちの暮らした土地を見てみたい。日本占領下の時代の古地図は結構ありますから、いろいろ調べられるんじゃないかと。もう「ブラタモリ」から「ファミリーヒストリー」まで自分自身でやりたいと(笑)。
そう、図書館での調べものの話をしましたが、古本屋も重要な場所です。もちろん、神田の神保町界隈に買い出しに行くこともありますが、この何年かは僕のターゲットでもあるサブカル系の雑誌を中心にした店が増えてきました。旅先で見つけた地方の書店でローカルな古本を漁るのも楽しいのですが、最近は「本の雑誌」で「昭和古雑誌ネット買い」なんて連載を始めたこともあって、インターネットで古書を探して買うことも多い。送料がちょっと高いのがもったいないのですけど、メルカリとかヤフオクで古本を買う時に、出品者が他にどういうものを出しているのか、なんてプロファイリングするのがなかなか面白い。そこで先日、小学生の頃の憧れの雑誌だった「ボーイズライフ」をゲットしました。
懐かしい雑誌は大好きですし、資料にもなるから、雑誌集めもやりたいこと。まあ、一番の悩みはそういった本や雑誌の置き場所かな。捨てる技術の方はないもんで(笑)。
(聞き手=松野大介)
▽泉麻人(いずみ・あさと) 1956年4月、東京都出身。慶大卒後、編集者を経てフリーとなり「ナウのしくみ」「東京23区物語」で人気のコラムニストに。近著に「昭和50年代東京日記」(平凡社)。