立川談慶さん「師匠・談志の残した言葉は今も響く」
「現実が事実」とドライに考えていた談志の言葉が今も響く
談志はこんなことも言っていた。酒が人間をダメにするんじゃない。人間てものは元々ダメなんだ、それを酒が教えてくれるんだと。ダメでいいんだと言ってくれる大人がいる、それこそがセーフティーネットであり、寄席、落語だと……。
「真理より道理」とも言っていました。西洋は真理は一つという考え方です。だから一神教のキリスト教とは親和性があります。でも、日本は八百万の神が宿る国です。あなたはそう言うけど、こっちはこう思う。だから、そんなこと言いなさんな、みたいなね。仲よくやるために折り合いをつけましょうという道理、譲り合って生きることから培われた価値観でしょうね。それも一つの割り勘。それがいいところでもあり悪いところでもある。向こうの言い分もこっちの言い分もなじませ、あんばいをつける。割り勘は折半という考え方じゃないんです。
「現実は事実」という言葉も重たい。私が前座の頃、談志と一緒に九州に独演会で行ったことがあります。農家にとっては繁忙期でお客さまが薄い状態だった。主催者は「師匠にせっかく来ていただいたのに」と涙ながらにわびていた。それに対して談志は「来なかった人が悔しがるようなことをやればいいだけだ」と言って高座を務めました。
現実の世界を突き詰めて生きてきた人のセリフだと感心しました。
人は言い訳したり他人に甘えることが多いけど、こういう時は「現実が事実」とドライに考えていた談志の言葉は今も響いています。
■ダジャレは滑ってもOK!大谷翔平でも打率は2割台
私も還暦になりましたから、還暦もキーワードにしました。この年になると健康診断で引っかかることも多くなります。例えば肝臓の数値が明らかに異常なら話は違いますが、少しぐらい数字が悪くても気にするな、真に受けない。それは緩やかな機能、緩(肝)機能だみたいに考えてみたらどうかといった具合に、ダジャレを提案したいですね。
ダジャレは言葉のまやかしにすぎないけど、口にして頭で感じるのが人間で、非常に効能があります。ダジャレは慣れみたいなもので、いわば捉え直しです。それには落語を聴きにきてくださるのが一番だけど、同音異義語は探していくうち、量を連発するうちにヒットするようになる。滑ることもありますが、それは打率と考えればいい。大谷翔平だって、3割打っていない。だから3割なら大打者。4回に1回当たればいいくらいのレベルで十分です。
オヤジギャグだと言われたら、「これでも今日は少ない方だよ」と開き直る。そのうちこの人はつまらないオヤジギャグを言う人だと認知されれば、一つのコミュニケーションのツールになります。 (聞き手=峯田淳)


















