虎ファン代表のダンカンさん 人生をタイガースとともにする契機になった60年前の阪神戦
ダンカンさん(タレント・俳優/66歳)
セ・リーグは7月末に阪神タイガースにマジックが点灯し、独走している。虎ファン代表の有名人といえば、右に出るものがいないダンカンさん。人生をタイガースとともにするきっかけは60年前の阪神戦だった。
■巨人が9連覇、世の中は平等じゃない
僕にとって人生の最大の分岐点は阪神との出合いだと思います。生まれたのは戦争が終わって14年後の1959年1月。当時はみんな中流で平等だと言われて育ちました。毛呂山町(埼玉)の出身ですが、中学の時に東京に高島平団地ができ、一軒家に住んでいる人は小さなマイカーを持つのが夢という時代です。
昭和40年、小学校1年の時です。国鉄スワローズから金田正一が巨人に移籍して開幕投手として投げた年です。そこから巨人の9連覇が始まります。
親父が後楽園球場に連れて行ってくれて、巨人対阪神を見ました。親父はガチガチの巨人ファン。その頃は巨人ファンといえば、みんな、先ごろ亡くなった長嶋さんのファンです。居酒屋の暖簾をくぐった時に、「勝った?」と言えば巨人のことだし、「ヒットを3本打った」と言えば長嶋さんのことで、長嶋さんのことを言う時は主語がいらない。そんな時代でした。
僕が見た試合では村山実が投げました。村山はザトペック投法が有名で、体は大きくないけど、全身を使ってダイナミックに投げる。その投げ方が変わっていて、僕は好きでしたね。でも、必死に巨人に向かっていったのに試合は1点が届かず、負けてしまった。村山は肩を落として寂しそうにしていました。その時、大の大人でも、あんなふうに悲しそうにすることがあるのかと思いました。そういう大人を見るのは初めてでしたから。
当時はうちの親父だけでなく、大人は多かれ少なかれ、「巨人の星」の星一徹のように、怒るとちゃぶ台をひっくり返すような時代です。遅くまで遊んで帰ると、「いつまで遊んでるんだ、バカ野郎!」なんて怒られてね。
ところが、村山はそんな大人たちとは違っていました。背中に哀愁が漂っているというか、あの後ろ姿を見て、子供ながらにジーンとくるものがありましたね。
そして、その年から中学校を卒業するまで巨人が優勝し続け、9連覇する。大人は、世の中はみんな平等だなんて言っているけど、平等でも何でもないじゃないか、嘘つきもいいところだと思いました。あの強い巨人を見てから反骨精神が芽生え、すべて人と違う方に考えるようになりましたね。