著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

ムッシュが真っ先に捕まえた「次に来るもののフック」

公開日: 更新日:

──長い髪で額を覆い、右半分が影になった四人の若者の顔が、黒いバックに浮かぶように並んでいる、そのモノトーンのジャケット写真を見て、ぼくはハッとした。彼らのビジュアル、伝わってくる雰囲気、すべてひっくるめて、あのグリニッジ・ヴィレッジの空気と同じだった。まだ日本では無名だったビートルズだが、ぼくはジャケットを見ただけで、彼らを一瞬にして理解した。

 グリニッジ・ヴィレッジ……この段階で、すでにニューヨークを訪ねているというのだから、さすがムッシュである。そして。

──迷わずレコードを買い、何度も聴いた。すごく新鮮で、「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」がとくにぼくのお気に入りだった。(中略)そのとき、ぼくには近未来が見えたと思った。次に来るもののフックを捕まえたという確信があった。震えるくらいの感動だった。

「次に来るもののフックを捕まえた」という表現がいい。かまやつひろしは決意する。音楽的方向性のはっきりしないスパイダースをビートルズ風のバンドにするぞ、と。

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