スポ根少年だったダイアモンド✡ユカイさんを変えたビートルズ「Yesterday」

公開日: 更新日:

ダイアモンド✡ユカイさん(ミュージシャン/59歳)

 ミュージシャンとして活躍する一方でタレントとしても人気のダイアモンド✡ユカイさん。ロックバンド、RED WARRIORSでデビューしたのは1986年。音楽人生を歩むきっかけになったのはザ・ビートルズ「Yesterday」だった。

 ◇  ◇  ◇

 小学校の頃は森田健作さんや村野武範さん、竜雷太さんとかスポコンに憧れる少年でね。柔道着姿で砂浜をダッと走りたいとか(笑い)。中学ではサッカー野球マラソン水泳に明け暮れていました。あの頃モテるのは日焼けしたスポーツができるタイプだから。

 当時は歌謡曲全盛の時代。沢田研二さんとか尾崎紀世彦さん、アイドルなら天地真理さんとか何でも聴いたね。学校に行くとそれをみんな歌うことができた時代でした。でも、ピアノを習うとか音楽をやるのはカッコ悪いし恥ずかしかった。音楽が好きなんていうのはナヨいやつと思われて。

 そんな時に野球でデッドボールを食らったんですよ。しかも当たりどころが悪くて踵を骨折しちゃって。運動ができなくなってさ。ムラムラしている年頃なのに、発散できない……。そこへ不良の友だちが「これでも聴けよ」とレコードをいっぱい持ってきてくれた。ディープ・パープルとかレッド・ツェッペリン……でも、みんな長髪なんだよ。長髪はダメ、スポ根だから(笑い)。その中にもう解散していたビートルズのレコードもあった。初期の「プリーズ・プリーズ・ミー」なんか爽やかなイメージでメロディーも楽しくてね。

 ハマっちゃったんだよね。その頃は音楽なんて何も知らないのに「ビートルズになりたい」って思った(笑い)。「プリーズ・プリーズ・ミー」は何回も何回も擦り切れるまで聴いたし、お小遣いを貯めて「ヘイ・ジュード」を買ったり。「Yesterday」はいい曲だと思ったね。

■人前で初めてギター片手に歌い拍手喝采

 当時はやっていたのは「神田川」とか「22才の別れ」とかだけど、俺は「Yesterday」を弾きたい! それでおふくろに「ギターを買ってくれ」と頼んだわけ。ところが、音楽に疎いから買ってくれたのはガットギター。クラシック、ナイロン弦の。周りはスティール弦のフォークギターなのに。

 それから近所にギターをやってるおにいちゃんがいるとおふくろに言われて教えてもらったのが「禁じられた遊び」。でも、「俺がやりたいのはこれじゃない」(笑い)。

「Yesterday」って初心者には難しい曲でね。その頃、カセットテープレコーダーが出始めて録音しながら何度も歌って覚えて。家に帰ると毎日6時間くらいずっとギターをガチャガチャ弾いて、それでも足りなくて外の陸橋の上で練習していたら、大声を出すから「この辺に狼がいる」と近所で噂になっちゃってね(笑い)。

 そんな時に学校の講堂で発表会があったんですよ。さいたまの大砂土中学2年の冬です。自由発表で何をやってもよかったから「7番、田所(本名)、Yesterdayを歌います」と人前で初めてギターを弾いて歌いました。始めたらガヤガヤしていた講堂がシーンとなって、終わったら拍手喝采! その頃の俺は地味なスポコン少年に思われていたから、あまりの反応に「スゲーな」「なんだこれは」と歌った俺の方がビックリしちゃったよ。

 その後で下駄箱にラブレターが入っていたりして「歌うっていうのは武器だな、こいつがあれば女にモテるんだ」と思いっきり勘違いしちゃったけどね(笑い)。プロになるのは何年か後だけど、自分を変えたのは「Yesterday」です。

実家を整理したらおふくろが最初に買ってくれたギターが

 高校は付属でエスカレーターで大学に入りました。高校の時から同級生とバンドをやっていたけど、大学卒業の頃にはメンバーがケーキ屋を継ぐとか広告代理店に就職するとかで音楽を離れていく。周りにいるプロを目指す人たちはインスタントラーメンをすすって昼はバイトをやってる現実が待ってるんだよね。

 そんな時に「信念の魔術」(謝世輝著)という自己啓発の本に出合った。「自分の人生は自分のもの」という言葉に触発され、俺は、夢は掴むものだと気がついたんだよね。それで思い出したのがあの講堂で歌った「Yesterday」。あの時、ビートルズになりたいと思ったじゃないか。両親とも公務員で普通に就職してほしいと思っていたけど、夢をかなえるために家を出て、どんな現実がやってきてもいいとプロになる決意をしました。

 夢に向かって真剣にやり始めたらいいメンバーも集まり、ライブに来てくれるファンが増えて1年でレコードデビューすることができた。そして俺の夢は俺の人生の仕事になった。

 おふくろはもう亡くなったけど、その前に実家を整理したんです。そうしたら、たまたまおふくろが最初に買ってくれたギターがゴミの山の中にあった。ヤマハの2万円の。ボロボロだから弾けるように整備して、自分のライブでそのギターで「Yesterday」を歌いました。

 10月17日に、年に一夜だけやってる「THE PREMIUM SHOW 2021」を東京アメリカンクラブをやります。最近出しているカバーアルバム「Respect」(男が泣ける男の歌)から沢田研二さんや上田正樹さんの曲、「トイ・ストーリー」のテーマソング「君はともだち」、RED WARRIORS時代の曲を吉田建さん率いるオーケストラでゴージャスに歌います。

(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    悠仁さま筑波大進学で起こる“ロイヤルフィーバー”…自宅から1時間半も皇族初「東大卒」断念の納得感

  2. 2

    中山美穂さん急死、自宅浴槽内に座り前のめり状態で…大好きだった“にぎやかな酒”、ヒートショックの可能性も

  3. 3

    辻仁成は「寝耳に水」 中山美穂離婚報道の“舞台裏”

  4. 4

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  5. 5

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  1. 6

    中山美穂さん急逝「加齢の悩み」吐露する飾らなさで好感度アップ…“妹的存在”芸人もSNSに悲痛投稿

  2. 7

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  3. 8

    【独自】急死の中山美穂さん“育ての親”が今朝明かしたデビュー秘話…「両親に立派な家を建ててあげたい!」

  4. 9

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  5. 10

    紅白出演をソデにした旧ジャニーズ痛恨の“判断ミス”…NHKに出たい若手タレントが大量退所危機

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 4

    大山悠輔に続き石川柊太にも逃げられ…巨人がFA市場で嫌われる「まさかの理由」をFA当事者が明かす

  5. 5

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  3. 8

    どうなる?「トリガー条項」…ガソリン補助金で6兆円も投じながら5000億円の税収減に難色の意味不明

  4. 9

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 10

    タイでマッサージ施術後の死亡者が相次ぐ…日本の整体やカイロプラクティック、リラクゼーションは大丈夫か?