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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

「覚醒剤と日本軍」我らは戦争の何事もまだ語れていないままだ

公開日: 更新日:

 先週、戦争中のとんでもない話が在阪のテレビニュースで報じられて、時代も変わったなと感じた。今まで広まることがなかったというか、戦争を生きた庶民たちが世間や、命を捧げさせられた国家を気にして口にしなかった「覚醒剤と日本軍」のトピックスだった。

 太平洋戦争開戦の年から、某製薬会社のメタンフェタミン製剤「ヒロポン」錠などが「除倦覚醒剤」なんて呼び名でヒロー(疲労)をポンとふっ飛ばす? 目的で市販されたのだ。密造や密売もはやったそうだ。そりゃそうだろ。腰抜けの政治家ばかりで軍部がやらなきゃおさまらない戦争が始まってしまっては、勤労奉仕というやつで10代の少年少女も鉄砲の弾や兵器作りに駆り出されたのだ。国民全員、疲労回復どころじゃなかったんだから。

 で、そのニュースだが、昭和5年生まれのおばあさん(今も大阪府に健在)が、高等女学校から陸軍の食料工場になり代わった校舎で、戦地の兵隊に送る“菊の紋付きチョコレート”を紙に包む作業を命じられ、それを食べてみたら、頭がカーッとなってクラッときたというのだ。上級生に「特攻隊員が死ぬ前に食べるんだから」と教えられ、父親に話したら、ヒロポンでも入ってんだろと言われたとか。実はその通りで、覚醒剤入りだったのだ。だが、陸軍の記録にはない。そんなチョコを与えて出撃させたなんて軍上層部は認めたくないし、知られたくなかったのだろう。

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