「役立たず」「無能」と罵られても会社にしがみつくのが大正解
「あのオッサン、また新聞読んで仕事してるフリしてるよ」――。若手社員の陰口が聞こえてきそうだ。サラリーマンも定年を間近に控えるか、いったん定年を迎え雇用延長を申し込む段になると途端に不愉快なことが多くなる。が、ここでムカッ腹を立ててはいけない。「知り合いの会社が高給で迎えてくれた」などの“特殊事情”がない限り、今の会社で働き続けた方が金銭的には間違いなくトクだからだ。
たとえば、アナタが定年まであと2年の58歳(妻は56歳)だとしよう。早く辞めてもらいたい会社は「退職金20%増」を提示してきたとする。仮に、現在の月収が50万円、60歳まで勤めた場合の退職金が2000万円、現状の退職金が1900万円だと仮定すると、2割増しなら合計2280万円となる。これだけ見れば「あと2年間働かなくても退職金が多くもらえる」と一見トクなように見える。が、さにあらず。会社員を辞めたとたん、個人にはさまざまな負担がのしかかってくるのだ。特定社会保険労務士の山田信孝氏が言う。
「やめた時点で厚生年金の負担はゼロになりますが、2年間払わなかった分、将来受け取る厚生年金額が大きく減ってしまいます。私の試算では仮に85歳まで生きた場合、2年間払わなかったために生じる減少額は約136万円になります。また、厚生年金は払わなくてもいいですが、国民年金は払い続けなければならない。これがクセもので、厚生年金はこれまで会社と折半、しかも妻の分まで面倒見てくれていたのに、国民年金は妻の分まで払わなければならないので、2年間で73万2000円の支出。組合健保をやめて国民健康保険に切り替えると、これも妻の分まで払うため、退職後2年目は無収入=7割の保険料減免で約3万5000円。失業保険が330日分約257万円もらえたとしても、60歳まで働いた場合とでは将来、受け取る老齢厚生年金を含めると総計700万円近く差が付いて損なのです」