芥川賞作家・高橋弘希さんの棋士の夢を断念させたある老人
私は、8月24日に都内ホテルで開催された第159回芥川賞・直木賞の贈呈式に出席した。
そして、「送り火」(文芸春秋)で芥川賞を受賞した作家の高橋弘希さん(38)に挨拶してきた。
実は、高橋さんは7月18日に受賞が決まったとき、「小説と将棋は似ているかもしれない。将棋って、小説を書いていく過程と似ているところがあるんです。〈何となく〉で進んでいくところが……」と、インタビューに答えていたからだ。
また、高橋さんがある新聞に寄稿したエッセーによると、作家をめざしたきっかけのひとつが将棋だったという。
高橋さんは青森県十和田市の出身。同県は将棋が盛んな土地で、小学生時代から指して強かった。地元では「村の名人」として無敵の存在だった。
ある日、囲碁漫画「ヒカルの碁」を読んで感動し、棋士になりたいと急に思い立ったという。ただ囲碁はまったく知らないので、将棋の棋士をめざすことにした。都内の大学に在籍していた21歳のころだった。