著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。最新刊は「酒好きの記」(集英社新書)

(43)群馬藤岡のうま酒探訪

公開日: 更新日:

 私は小山商店で「流輝 純吟 無ろ過生 山田錦 9号酵母」を求め、松屋酒造への取材の前日の晩に、谷中ショウガ、枝豆、タコとシシトウ炒めなどをつまみに、試してみた。

 香りがよかった。それが最初の印象だ。吟醸酒特有の果物のような香りがふわりと立って全体を甘く包み込む。一方で喉を過ぎる頃には印象が少し変わる。酒らしくなる、というと妙な言い方だが、甘いだけでない顔が見えてくる。豆に合い、ショウガに合い、タコにもシシトウも合った。つまり、ほんの2、3品の夏の酒肴があれば、いくらでも飲めてしまう。実際のところ、明日は群馬まで出かけて蔵を見せてもらうというのに、2杯、3杯、4杯と、飲む手が止まらなくなってしまった。

 蔵を訪ねたとき、蔵の命運を賭けた「流輝」を造ってから10年が経過していた。それでも、生産量は200石(1石は1升瓶100本)と少なかった。米を洗い、水分を含ませるところから、仕込み、搾り、瓶詰まで、松原さんと、当時の社長であった松原さんのお父様とで担当していた。蔵にいるのはほかにパートの従業員がふたりだけだと聞いた。

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