自分を知るための道筋が言語化されていく「ふたりの読書会」向井和美著
「ふたりの読書会」向井和美著
ここ数年、オンライン・オフラインも含めた読書会の開催数は増加傾向にあるという。読書会には多様な様態があり、外国では刑務所で行われているものもある。著者は、カナダにおけるそれを紹介した「プリズン・ブック・クラブ」という本を翻訳、次いで著者が参加している読書会の模様を描いた「読書会という幸福」を上梓した。
そんな著者のもとに1通の手紙が届いた。送り手は20年前に強盗殺人を犯し現在服役中の受刑者。そこには、刑務所内で本を読むようになって、これまでの自分は羅針盤を持たずに旅を続けてきたことに気づいた。そんなとき著者の2冊の本に出合う。もし本について他の人の意見を聞き、自分の思い、感じることと対比できれば、さらに心が開かれ世界が広がっていくにちがいない。自分も読書会を経験してみたい、と書かれていた。これを受けて著者は、手紙を通じて同じ本を読んでふたりで語り合うというのはどうかと提案。これはもう立派な読書会で、こうしてふたりの往復書簡=読書会が始まる。
本書には2023年3月から翌年3月までの1年分の往復書簡が収められている。当初お互い手探りといった感じだったが、著者が次々に送っていく本(1年間で63冊)に対して、受刑者が貪欲に読み込み、独自の感想をつづっていくにつれ、ふたりの信頼が深まっていく。著者は日本ではまだ実現していない刑務所での読書会開催に動き(一部で実現)、受刑者は手紙では枚数が制限されているため別途ノートに長文の感想を書き、投稿という形で著者の読書会にも参加する。「本との対話があってこそ、自分に問いかけることができる。そしてひとりではそれが引き出せないのだ。読書会をすることで、自分を知るための道筋が言語化されていく」。この受刑者の言葉こそ読書会の本質だろう。この読書会は現在も継続中とのこと、その後の書簡もぜひ読みたい。 <狸>
(岩波書店2420円)



















