よみがえった写真が伝える戦前戦時下の“時代の空気”「AIとカラーでよみがえる戦争の昭和史」別冊宝島編集部編
「AIとカラーでよみがえる戦争の昭和史」別冊宝島編集部編
今年もまた8月15日、81回目の終戦記念日を迎える。
戦後、日本では戦争の責任を暴走した軍部や一部の指導者に負わせてきた。しかし、戦争は特定のリーダーによって引き起こされるものではない。
「戦争が引き起こされる要因の多くは1人の独裁者による決断ではなく、民衆によって醸成された『時代の空気』ともよべるものによる後押しなのである」(本書)。
戦争に突き進んだ昭和の前半、日本を包んでいた「時代の空気」とは一体どんなものだったのか。それを知るための手だてが、AIによる過去の写真のカラー化だ。AIによるカラー化は、写り込んだモノの質感、背景の建物や自然の風景、そして人々の表情までリアルに再現する。これまでの不鮮明な白黒写真では伝わってこなかった「時代の空気」が肌で感じられる。
本書は昭和天皇の即位から敗戦までの20年間をAIでよみがえった写真で振り返る写真ドキュメント。
大日本帝国憲法では、天皇が陸海軍の最高指揮権である統帥権を持つとされ、即位したばかりの昭和天皇が海軍の特別大演習で初めて観艦を行ったり、大礼観兵式に臨む映像が残っている。
当時の世の中は世界恐慌による不況下だが、銀座ではモガと呼ばれた女性たちが闊歩し、自由を満喫している。
その後、満州事変の発端となった柳条湖事件の現場や、柳条湖に近い奉天へ侵攻を開始する関東軍、満州事変の勃発を受け、吉林から長春に到着した日本人避難民などの写真で、時系列、そして多視点で歴史を追っていく。
そのリアルな映像に読者は歴史を追体験するような気分になるが、その後の結果、行く末を知っているだけに、さまざまな疑問がわき、複雑な気持ちになることだろう。
その後も、満州国の新たな首都に定められた新京で進む大規模な開発や、満州国を縦断する特急「あじあ」の先進的なボディーなど、時代の高揚が伝わってくる写真に続いて、満州国に反対していた犬養毅首相が暗殺された五・一五事件(昭和7年)や、国際連盟脱退(昭和8年)を表明する松岡洋右全権の演説、天皇親政を目指す陸軍の青年将校らによる二・二六事件(昭和11年)など、写真から伝わってくる時代の空気はきなくさくなってくる。
それでも日中戦争がはじまる半年前の昭和12年正月に多くの人でにぎわう浅草や大学野球の熱戦とそれを見守る観客など、変わらぬ庶民の日常を切り取った写真が残っている。
以後、日中戦争から真珠湾攻撃ではじまる日米開戦、原爆投下、玉音放送、そして占領までを写真でたどる。
補給が途絶え、飢餓に苦しみながら、多くの日本兵が餓死したといわれる。餓死寸前で捕虜となった日本兵の写真()や、無謀な特攻の現実、銃後の人々の暮らしまで、AIによるカラー化写真は歴史のはるかかなたにあった戦争をぐっと身近に感じさせてくれる。
世の中が新たな戦前へと向かおうとしている今こそ、次代を担う子供たちと一緒に手にしたい一冊である。
(宝島社 1950円)



















