昭和っ子たちの証言を元にした25の不思議な物語「昭和懐古奇譚集」川奈まり子著
「昭和懐古奇譚集」川奈まり子著
昭和33年の5月。21歳の私は、父への贈り物を受け取りに銀座の鳩居堂へと出向いた。都電に乗るとウトウトしてしまい、「銀座四丁目」のアナウンスで慌てて下車。降りた途端、何かがおかしいと感じた。道行く人の服装が違い、外国人が大勢歩いている。和光の建物は1階がガラス張りになっている。突然、外国人男性が薄い板のようなものをこちらに向けてきた。鳩居堂では注文の伝票を渡すと「お取り扱いできません」。家に電話したくても公衆電話はどこにもなく、三越百貨店の入り口にライオン像がある。日本橋本店にしかなかったはずなのに……。
和光から4時のチャイムが聞こえ、都電が来たので飛び乗った。またウトウトして気づくと「銀座四丁目」で、降りてみると、見慣れた銀座の景色があった。(「路面電車」)
謎の子どもと遭遇した「空き地の土管」、恐ろしい未来を予言する「紙芝居屋」など、昭和っ子たちの証言を元にした25の不思議な物語。怪異があってもおかしくない昭和の空気感が懐かしくもぞっとする。“あちらの人”として登場する多くは、戦争で犠牲になった子どもや一般市民。戦後と地続きの昭和にあの世と現の境目が口を開けているような錯覚に陥る。
(笠間書院 2420円)



















