返済を求めない給付型の奨学金制度「パチンコ・パチスロ奨学金」とは

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パチンコホールで「募玉」

 7月28日に最大震度7の非常に激しい地震に襲われた熊本県では、その後も余震が続くなど地震活動が活発になっている。加えて、連日の猛暑。日中の最高気温が40度を超えて、熊本県では初の酷暑日を記録した日もあり、被災者にとっては過酷な夏だ。一日も早い復旧復興と、被災者に平穏な日常が戻ることを日本中が祈っている。

 そんな中、パチンコ業界はいち早く被災地支援に乗り出した。関連団体やホール各社が被災地域の自治体などに義援金を寄付する動きがある。その原資の一部にもなっているのが、来店客の「玉・メダル」だ。各店舗で玉・メダルによる義援金の寄付を受け付けている。

 過去の震災でも、パチンコ業界は多額の義援金を寄付するなど社会貢献に力を入れてきた。あまり知られていないが、実は、顧客の余ったパチンコ玉やメダルを使った奨学金制度もある。募金ならぬ「募玉」が、経済的な理由で就学が困難な学生を助けてきたのだ。

 各店舗に設置された「募玉募金箱」に端玉などを寄付すると、パチンコ玉は原則1玉4円、パチスロコインは1枚20円換算で集計し、ホール各社から「公益社団法人パチンコ・パチスロ奨学金」に集約される仕組みになっている。

今年7月1日に公益社団法人に移行

 この「パチンコ・パチスロ奨学金(pp奨学金)」は、「社会福祉法人さぽうと21」の協力を得て2016年に設立。2021年から一般社団法人として事業を展開してきた。

 今年7月1日には、内閣総理大臣の認定を受けて公益社団法人に移行。より公平性、透明性を重視した組織運営を目指していく。

「パチンコ業界で公益社団法人というのは異例のこと。これまでの実績が認められて嬉しく思うのと同時に、身が引き締まる思いです。経済的な理由で進学を諦めたり、奨学金の返済に苦しんだりする若者を少しでも減らそうと考え、pp奨学金は完全給付型にしています。その代わり、本当に困っている学生に届けたいから、選考は厳しく行う。経済的に困窮していることと成績優秀であることが大前提なので、納税証明書と成績証明書の提出を求めています。面接では、進級先・進学先で何を学びたいのか、どういう将来のビジョンを持っているのかも重視しますね」(pp奨学金代表理事の吹浦忠正氏)

 2017年度に行ったパイロット事業から数えると、2025年度までに延べ282人の学生に総額1億2776万円を給付してきた。これまでの応募総数は1241人というから、“狭き門”ではある。

 pp奨学金は、日本国内の就学時に18歳~30歳までの進学希望者であれば、応募資格に学校や学部・学科の制限はない。地域の制限もなく、日本全国の専門学校等の各種学校の学生も対象にしているのが特徴だ。

 2026年度も応募総数128人から、書類選考とオンライン面接を経て34人に奨学金を給付。対象者は、東京大学や京都大学の大学院生から、看護の専門学校生、海技大学校の学生まで幅広いという。

給付生とpp奨学金会員たちをつなぐ「近況報告ハガキ」

 奨学金は奇数月に2カ月分をまとめて振り込み、その受け取り確認を兼ねた「近況報告ハガキ」を給付生が事務局に送ることになっている。そのハガキはpp奨学金の会員や賛助会員、個人の寄付者にもダイジェストメールとして送られる。双方をつなぐ役割を果たしているのだ。

 ハガキの一部を特別に見せてもらったら、みなハガキ一面にびっしりと近況や感謝の気持ちを書き込んでいて、胸が熱くなった。真面目に勉学に励み、社会経験を積んでいる意識の高さが伝わってきて、遊び惚けていた自分の学生時代が恥ずかしくなる。

            ◆

<この夏休み中は、法学の学習が本格化する前のAI関係の基礎知識習得を目指し、プログラミング基礎学習と準インターンの経験を積む予定です>(上智大学法学部1年)
<夏休みはまとまった時間がとれる貴重な機会ですので、時間を無駄にすることなく、語学の復習やボランティアなどの様々な経験を通して、人間的にも成長できる有意義な日々にしたいと考えております>(関西大学外国語学部1年)
<将来、リンゴ農家を支える自律収穫ロボットを開発するという目標に向け、専門知識の習得と試作に励んでまいります>(千葉工業大学先進工学部1年)
<幼い頃にのめり込んだ分野の授業を受けることができ、当時の憧れに近づいていることを実感しております。まさか自分がその延長線上に立てるとは思ってもおらず、喜びとともに感謝の気持ちを抱いています>(東京大学大学院理学系研究科修士1年)    

            ◆

「給付生は本当に真面目で優秀ですよ。ほとんどの奨学金制度は大学入学時に向こう4年間の奨学金給付を決めていますが、pp奨学金は1年単位で給付生を決めるシステムにしています。継続して給付を受ける学生も、毎年の成績を提出してもらっているので、手を抜くことなく勉学に邁進している。彼らの将来の夢の実現に向けて、pp奨学金が少しでもお役に立てるならば、これ以上の喜びはありません」(pp奨学金の吹浦代表理事) 

 ホールで遊技した”余り”が困窮学生の助けになると思えば、なんとなく気分がいいものだ。もちろん、募金箱には玉・メダルでなく現金を入れても構わない。

 慈善活動というほど大げさなものではなく、ほんの小さな習慣が苦学生を助け、ゆくゆくは日本の将来のためになるかもしれない──。そんな想像をしながら、端数のパチンコ玉やメダルを店頭の「募玉募金箱」に寄付してみてはどうだろうか。

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