評論家・中野剛志氏 「米国の衰退で未経験の悲劇が起こる」

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 恐ろしいタイトルの本が出た。「世界を戦争に導くグローバリズム」(集英社新書)。帯には「次に起きてしまうのは覇権戦争!」とある。ベストセラー「TPP亡国論」で知られる著者は一貫して、「米国の時代は終わった」と主張する。それは戦後の世界秩序の崩壊でもある。その次に来るのは、覇権国家なき大混乱であって、もちろん、日本もその渦にのみ込まれていく。問題はこうした危機に政治も国民もあまりに鈍感なことだ。

――第2次世界大戦後、冷戦を経て、米国の一極覇権の時代になりました。それがもはや、完全に崩れていると?

 世界を見てください。中東の混乱は収拾がつかず、ロシアはクリミアを強引に奪取したが、国際社会はなす術がない。東シナ海、南シナ海では中国による挑発行為が止まらない。いずれも米国が世界の警察官として睨みを利かせていれば、考えられなかったことです。

――確かにロシアに対しても、「イスラム国」に対しても米国は無力ですね。

 イラク戦争の後、大きな転換が訪れたのです。米国はイラク戦争でかなりの打撃を受けた。経済的にも精神的にも。そこにリーマン・ショックが襲いかかった。そのどちらも米国の大戦略のミス。自業自得です。自由や民主主義といった米国の価値観を武力で他国に押しつけ、混乱を招き、グローバル化で経済を不安定化させて、米国は衰退した。グローバリズムという思想の過ちの結果です。

――だから世界各地で火柱が噴き上がった?

 東アジアの緊張、中東の大混乱、ウクライナ危機などのトラブルが世界中でほぼ同時に起きたのは偶然ではありません。米国の覇権国家としての力が落ちたからこそ、ここぞとばかりに噴出したのです。冷戦後の米国は覇権国家として世界に君臨するためにユーラシア大陸を支配することを重要視した。そのために東アジア、中東、東欧の三極を押さえようとした。この三極で同時に緊張が高まっている。危機がひとつであればいざ知らず、三極同時となると今の米国では対処できません。

■米軍は尖閣諸島では動かない

――ちょっと待ってください。日本は米国に守ってほしくて、集団的自衛権の行使を強引に閣議決定したのではないですか? その米国が頼りにならないとなると、この前提が崩れてしまう。

 米国が世界の警察官としての力が落ちてきたからこそ「日本も相当の責任を負担せよ」ということなのでしょう。そういう議論自体は10年前でもありました。でも、この10年で米国の国力は予想を超える速度で落ちてしまった。日本が集団的自衛権を強化し、米国に協力しても、もう間に合わない事態だと思いますね。

――でも、日本は日米ガイドラインを見直して、周辺事態でなくても、米軍に協力しようとしています。トンチンカンもいいところですか?

 米国が日本を守れるのかは怪しいと思いますよ。一例をあげると1982年のフォークランド紛争の際、米国が米英同盟に基づいて、派兵したかというと、していない。イギリスは独力でアルゼンチンからフォークランドを奪い返した。尖閣だって同じことです。アルゼンチンに対して動かなかった米軍が、核保有国であり、GDP世界第2位の中国に対して動くでしょうか。

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