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サトジガバチvs寄生バエ 攻防の決定的瞬間

「昆虫のすごい瞬間図鑑」石井誠著

 夏の早朝、街中の街路樹や公園などでも観察することができるセミの羽化は、比較的に出合いやすい自然界の神秘のシーンといえる。ところで、羽化のとき、セミの脚の関節や胸部から水滴が噴出するのをご存じだろうか。その水滴は、羽化直後の透明な羽をつたい、下草を濡らすほどだ。

 体から余分な水分を減らして体重を軽くするためと思われるが、その理由は不明だそうだ。

 本書は、そうした昆虫たちが見せてくれる「決定的瞬間」を紹介しながら、昆虫たちの生態を解説した図鑑。

 獲物のアオムシを巣穴へ運び込もうとするサトジガバチとその巣を横取りしようとする寄生バエの攻防、昆虫では珍しい子育てをするエサキモンキツノカメムシ、葉っぱをかじった跡が「?」マークになるクズノチビタマムシ、ハエなのにハチにしか見えない「フトハチモドキバエ」など。長い進化の果てにたどり着いた、昆虫たちの実に巧妙な生き残り戦略を美しい写真で紹介する。

 70年以上も昆虫の生態を研究してきた著者は、都市近郊や里山など、私たちが普段目にする虫たちこそ、環境の変化や外敵など「あらゆる危機に見事に対応してきた、最強の昆虫」ではないかという。

 オオカマキリのメスが交尾中にオスを食べることはよく知られているが、実はこれは実験室内で飼われているカップルでよく見られる光景で、自然界ではそう高確率で観察できるものではないそうだ。ただし、オスを食べたメスの産卵数は食べなかったメスと2倍以上の差があるという。

 私たちの暮らしのすぐそばで日々繰り広げられている、そんな昆虫たちの驚異の世界を垣間見せてくれるお薦め本だ。(誠文堂新光社 2100円+税)

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