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全国から厳選 30の海駅を巡る紀行ガイド

「海駅図鑑 海の見える無人駅」清水浩史著

 著者は、「海が見える」かつ「旅情をそそる」の2つの要素を満たした無人駅を海駅と定義。電車を乗り継ぎ、全国9000もある鉄道駅の中から厳選した30の海駅を紹介してくれるのが本書だ。

 北海道・釧網本線の「北浜駅」は、流氷の名所としても知られている。天気予報と流氷情報のチェックも怠りなく、一面に広がる真っ白な流氷をイメージして早朝の北浜駅に降り立ったが、目の前には青々とした海が広がっていた。気を取り直して、午後に出直すと、海面は一変。強い波に運ばれてきた流氷で埋め尽くされようとしていたという。さらに駅舎を出て海岸へ出れば、そこは非日常の別世界だった。

 さらに著者は、年々減少する流氷を心配しながら、かつてオホーツク海沿いで芽生えた、アイヌ民族の祖先とも異なるオホーツク文化についても思いを巡らす。

 本書は図鑑と銘打ちながらも、単にデータを添えるだけでなく、海駅周辺の歴史や自然、人の営みにまで視線を向ける優れた紀行エッセーとなっているのだ。

 他にも、ホームから一歩踏み出せば、そこは海水浴場で海水浴の時期だけ列車が止まる「田井ノ浜駅」(徳島県・牟岐線)、線路とホームが海水面近くにあり海岸と溶け合っているような「大三東駅」(長崎県・島原鉄道)など。北から南へと日本各地を巡る。

 愛媛県・予讃線の「下灘駅」では対岸に見える猫の楽園「青島」に渡るなど、著者のもうひとつのライフワークである「秘島」巡りへと足を延ばす。海駅を訪ねる列車旅は奥が深い。

 ひとたび海駅に降り立てば、次の列車まで時間はたっぷりとある。島まで足を運ばなくとも、ホームから海を眺めるだけでも、かけがえのない時間を過ごせそうだ。(河出書房新社 1600円+税)

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